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真っ直ぐな歌とウクレレのハーモニー


「もう12年ぐらいになるのかな……。楽器屋の店員さんに勧められて何気なく買って弾きはじめたのが最初です。それがいまや、こうやって作品までリリースすることになっちゃうんだから自分でも驚いてるんですけどね」(今野英明:以下同)。

 Rocking Time、突然の活動休止から約1年、〈ウクレレを持った渡り鳥〉と化して、その魅惑の歌声を全国津々浦々に届けてきた今野英明。そんな彼が東西の名曲カヴァーを中心にしたウクレレ・アルバム『UKE! TIME』を発表する。

「レゲエにニューオーリンズ・リズム&ブルースとか吾妻(光良)さんの曲を混ぜてDJするような感覚で、〈こんな曲をウクレレでやったら楽しいんじゃないかな?〉とか、ジャンルにこだわらず選曲していきました」という彼の言葉どおり、サム・クックの“You Send Me”からフォーク・クルセイダーズの“悲しくてやりきれない”、さらには林間学校の定番(?)“遠き山に日は落ちて”まで、〈ウクレレ=ハワイアン〉という図式を覆すジャンルレスな楽曲を取り揃えた今作。それら彩り豊かな楽曲を紡いでいくのは、いつでも変わることのない彼の真っ直ぐな歌声と、それに寄り添うようにして鳴り響く表情豊かなウクレレの調べ。

「実はこの10年ぐらい、ずっと1本のウクレレしか使ってないんですよ。今回のレコーディングでもそれしか弾いてないから基本はワントーンなんだけど、そこに〈木村マジック〉が働いて、びっくりするぐらい見事なサウンドになって(笑)」。

 そう。このアルバムを語るうえで忘れてはならない存在が〈泣く子もダブる〉音響職人・パードン木村。ウクレレ本来の温和な音色を徹底的に活かした彼のサウンド・エフェクトは、今作にさらなる奥行きと味わい深さをもたらすこととなった。

「木村さんには〈電子音楽のマエストロ〉っていうイメージがあったんで、最初は〈俺の音って、あんまり飛ばし甲斐ないんじゃないかなあ〉とか思ってたんですよ。でも、実際やってみたら、生音をじっくりと、すごくいい音で録ってくれて」。

 ちなみに今作のレコーディングが行われたのは豊かな自然に周りを囲まれた湘南の葉山。

「録音は山の中腹にあるカフェで。もともと企業の保養所だったみたいで、内装もロッジっぽい感じなんですよ。そこで昼間っからビール飲みながら(笑)。すごく天気も良かったし。そのときの雰囲気も強烈に入ってるんじゃないですかね」。 

 イイ感じにレイドバックしまくった現場の雰囲気は、結果として、こんな好転反応を生み出すことに。

「今回は自分っていうものが、良くも悪くも全部音に出ちゃってると思うんですよ。ここだけの話、ヘベレケになって弾いてる曲もありますから(笑)。でも、それがすごく良くて。シラフの時には絶対、出せない音なんですよね」。

 葉山のレイジーな風土に育まれた極上のリラクシン・ミュージック。このアルバムは、あなたを心地良い夏の午睡の彼方へと、きっと優しくいざなってくれるに違い、ない……zzzzzzzz。

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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2005年07月14日 15:00

更新: 2005年07月14日 17:18

ソース: 『bounce』 266号(2005/6/25)

文/望月 哲

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