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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2005年07月14日 15:00

更新: 2005年07月14日 17:18

ソース: 『bounce』 266号(2005/6/25)

文/駒井 憲嗣

沖縄から届いた極上の〈Blue Beat〉!


 昨年待望の単独音源をリリースし、スカ・フリークを熱狂させた沖縄産スカ・バンドであるMajesticsの持つビート感は、数多のオーセンティックなアーティストと比べても際立っていた。南国特有、と言ってしまうと簡単だが、スカが元来持つシンプルでタフなビートに味付けされた、不思議な緩さとねっとりとしたグルーヴ感を強く感じさせる逸品だった。

 そのMajesticsのキーボーディスト、真喜屋実のソロ・プロジェクト=Stinking Blue Beatが始動した。果たして届けられたファースト・アルバム『Life Is A Stra-nge Way』は既聴感と浮遊感を覚える、奇妙な居心地を持つサウンドだった。

「いままで自分がやってきたことの集大成を作りたくて、まさに〈Life Is A Strange Way〉という気持ちを込めて! タイトルは僕自身が結構音にマニアなので、コテコテのプンプン臭う〈Blue Beat〉を作りたいというイメージで付けました」。

 まさに〈匂ってくる音〉──昨年1年がかりで制作されたというアルバムは、Majesticsと共に沖縄のオーセンティック・シーンを牽引するスカイメイツのホーン・セクションをはじめ、ユープラことU-DOU & PLATYのウチナーグチを採り入れたダンスホール・スタイル、といった異なる要素が渾然となっている。

「(沖縄では)同じジャマイカ音楽のレゲエとスカ好きのそれぞれがまったくリンクしていないので、それをやれたらと。また、沖縄は狭いので、そのへんがチャンプルーできる文化があるから」。

 多くのゲスト・プレイヤーに加え、ここでのトラックメイカーとしての彼のビート・ジャンキーぶりも尋常ではない。

「普通ですが、まずドラムから。これがいちばん大変で、レコードを死ぬほど聴いてドラムを探してます。(制作の)最後のほうは古い音がどうやれば出るのか試行錯誤して、ギター・アンプで音を鳴らして録ったり、テレコをマイクにしたり、サウンドシステムっぽい状態で音を録ったり、メチャクチャやりました」。

 決して冷めない地上の熱がゆらゆらと陽炎を現出させるような、そのおぼろげな音の手触り。並々ならぬヴィンテージな音の質感へのこだわりは、ある意味エンターテイメントでさえある。

「基本はやはり60年代のジャマイカ~スタジオ・ワンが大好きです。あと、サントラとかBGMが好きなので、昔は(映画の音だけを)テープに録って内容に関係なく聴きまくってました」。

 そんな原体験が、このサイケデリックとさえ形容したい、映像が立ち昇ってくるようなStinking Blue Beatのサウンドの源なのだろうか。

「とにかく古い音にしたかった。自分の好きな音の続きを聴きたいというイメージで」。

 まさしく泡盛の酩酊感(?)。あの楽園のような奥深い酔い心地にも似て、夢の中で聴いていた音の続きを楽しんでいるかのよう。Stinking Blue Beatの音からは、他の地域や国のアーティストからは生まれ得ない類のエキゾティシズムが強烈に湧き起こる。

「そう言ってもらえると嬉しいです。例えば細野(晴臣)さんの昔のソロ作品とかには強く憧れます」。

 名護をベースにあくまで沖縄ローカルの活動にこだわる彼が生み出す、沖縄だからこそ出せるモンドかつ和みのビートに、いつまでも揺られていたい。

▼Majesticsの作品を紹介

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