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特集

戦後のゴスペル黄金時代を華やかに彩ったクァルテットたち GOLDEN AGE GOSPEL QUARTET

 BBOAと同時代に活躍したクァルテットというと、ファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・ミシシッピ、ソウル・スターラーズ、ピルグラム・トラヴェラーズ、ベルズ・オブ・ジョイ、それにディキシー・ハミングバーズ……これはただ単にハミングバーズによる53年のヒットソング“Let's Go Out To The Programs”で登場するクァルテットを並べてみただけなのだが。まぁこれらすべて、とんでもない名人揃いで伝説的なビッグネームばかりだ。50年代といえばゴスペル黄金時代と呼ばれる時期。人気グループが次々と表舞台に登場し、アメリカ各地で躍動的な歌声を響かせていた時期である。当然、それぞれがより広範な人気を得るため、音楽性をぶつけ合うようにしてしのぎを削り合った。

さて、BBOAのいちばんのライヴァルは?と訊かれたら、それは〈オリジナル〉で張り合ったミシシッピである。アーチー・ブラウンリーという不世出のリード・ヴォーカリストを擁したこのクァルテット、黄金時代をもっとも眩く照らす偉大な集団だ(アーチーのあとにリードを受け持ったロスコー・ロビンソンは後にBBOAに加入)。とにかく、偉大な人が多すぎる。先述したクァルテットのリード=ソウル・スターラーズのRH・ハリス、トラヴェラーズのカイロ・ターナー、ハミングバーズのアイラ・タッカーらは、ソウル・ミュージックのルーツを辿っていけば必ずぶつかる名シンガーたちだ。彼らの歌唱やハーモニーの構築方法、またショウでのステージ・アクションなどは、その後の黒人音楽のスタイル形成にも多大な影響を与えた。ほかにも、スピリット・オブ・メンフィス、スワン・シルヴァートーンズ、フェアフィールド・フォーといった実力のある名クァルテットが50年代のゴスペル・シーンで活躍、数々の名曲名演を残した。

 やがて、リズム&ブルースの時代へと進むと、ゴスペルの世界から転向するシンガーも出てくるわけだが、そのなかでもっとも有名な名前はソウル・スターラーズに在籍したサム・クックだろう。世俗音楽界とゴスペル界の橋渡しを行った彼は、功労者であると同時に、スケールの大きなブラック・ミュージックを創造した偉人でもある。

 ゴスペルのパワーや効力をもっと広く行き渡らせたい──それと同様の意識は、後に登場するカーティス・メイフィールドが在籍したインプレッションズの音楽にも見ることができる。

▼文中に登場するアーティストの作品を一部紹介


ファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・ミシシッピのベスト盤『The Best Of The Five Blind Boys Of Mississippi』(MCA)

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2005年06月16日 18:00

更新: 2005年06月16日 18:12

ソース: 『bounce』 265号(2005/5/25)

文/桑原 シロー

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