The Blind Boys Of Alabama(3)
第2期黄金時代への突入
さて、彼らの力がピークに向かった40年代末~50年代にかけては、ハードな男性クァルテットの全盛時代。両ブラインド・ボーイズのほかに、ブルー・ジェイ・シンガーズ、センセーショナル・ナイチンゲールズ、スピリッツ・オブ・メンフィス、ディキシー・ハミングバーズ、スワン・シルヴァートーンズ、ソウル・スターラーズ、フェアフィールド・フォー、ピルグリム・トラヴェラーズなどの素晴らしいクァルテットが各地で活躍した。ちなみに、この〈クァルテット〉には5人組や6人組も珍しくない。ゴスペルの場合、必ずしも4人ではなくとも、そのスタイルによってゴスペル・クァルテットと呼ぶのである。
そんなクァルテット全盛時代、BBOAはファウンテンにエクスカーノ、当初はギタリストも兼任して素晴らしい腕を見せたジョージ・スコット、さらに新加入のサミュエル・K・ルイス、エクスカーノの後釜となったジョージ・ウォーレンなどが絡むツイン~トリプル・リードで、もっともハードなクァルテットとしてその地位を築いたのだった。“Marching Up To Zion”“Oh Lord Stand By Me”、あるいはミシシッピのパーセル・パーキンスが加わった(!)“Fix It Jesus”といった激辛名唱の数々よ!! 最近の彼らから聴きはじめた人も、ぜひこのスペシャルティ時代を聴いていただきたいと切に願うものである。
その後もメンバーを替えながら、しかしファウンテン、スコット、トーマス、フィールズのオリジナル・メンバーは不動で、50~60年代にかけて、サヴォイ(およびその傘下のゴスペル)、ヴィー・ジェイ、ホブなどに録音。しかし、ポップな志向も見せていき、徐々に迫力が低下していった感は否めない。
67年にはファウンテンがソロとして独立し、グループは残ったメンバーで存続。78年にリユニオンして3枚のアルバムを残したが、ファウンテンはふたたびグループを離れ、エディプス王のギリシア悲劇とゴスペルを合体させたオフ・ブロードウェイ・ミュージカル「ゴスペル・アット・コロナス」に、オリス・トーマスとミシシッピ(のBBOAに在籍していたメンバー)をミックスさせたグループを率いる形で出演。同ミュージカルはヒットし、オビー賞も獲得したほどで、ファウンテン/BBOAの一般的な知名度もぐっと上がった。一方で、オリジナル・メンバーのスコットとフィールズも〈アラバマ〉の名のもとグループを続けるという、テンプテーションズ並み(?)の分裂劇を演じていたが、90年代にファウンテンが戻り、ジミー・カーターが加わる形で、BBOAとして完全復活。エレクトラ、ハウス・オブ・ブルース、リアル・ワールドを拠点に精力的な活動を続ける。
メンバーには変動もあるが、冒頭にも書いたようにジャンルを超えた活躍をし、現在はさながら第2の黄金時代。〈教会から離れた〉という批判もあるらしいが、ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンドをバックにした2002年作『Higher Ground』にゲスト参加したベン・ハーパーと意義あるコラボレーションを行うなど、実りも多い。残念なことに、ベンとの共演ライヴ盤と新作『Atom Bomb』のレコーディング後、ジョージ・スコットが亡くなり、オリジナル・メンバーはクラレンス・ファウンテン1人になってしまった。しかし、世にゴスペルがある限り、このグループの名は簡単に消えはしないだろう。