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心はロンリー、気持ちはエイコン

 ボビー・ヴィントンのオールディーズ曲“Mr. Lonely”を早回しループした哀愁ソング“Lonely”が日本でもヒットし、およそ1年遅れながら無事に日本盤もリリースされたエイコンの『Trouble』。しかし、〈サグ・ラッパーのアルバム?〉と見まごうようなジャケに身を包んだこの作品は、すでに本国USで大ヒットを記録していたものだ。そのような現地での人気を牽引したのは、2003年当時流行していたエキゾチックなダンスホール・スタイルのデビュー・シングル“Bananza(Belly Dancer)”、ではなく……そのB面に収められていた切々たるシリアス・チューン“Locked Up”だった。曲名のとおり、刑務所の重い扉がガチャリと閉まる音をループしたこの曲はエイコン自身の実体験に基づくものだという。

 2000年頃からクウェイ・ボー・ゴールドやラシーダ、リル・ゼインなどを手掛けてサザン・ラップ好きには知られていたエイコンはセネガル出身。ジャズ・パーカッショニストのモル・チアムを父に持ち、幼少の頃にUSに移り住んできたのだそう。そんな背景もあって、アフリカ音楽やレゲエの影響を色濃く滲ませたこの独特なR&Bサウンドが誕生したのだろう。最近はベイビー・バッシュ“Baby I'm Back”をプロデュースするなど着実にステップを踏んでいる彼。哀愁味を帯びたメロディーを書き、多彩なトラックをプロデュース、歌ってラップも聴かせる……ワイクリフにも近い資質を武器にしたこの才能は、必ずやシーンの新たな顔役となるはずだ。

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2005年05月12日 13:00

更新: 2005年05月12日 19:07

ソース: 『bounce』 264号(2005/4/25)

文/出嶌 孝次

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