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特集

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2005年04月13日 17:00

更新: 2005年04月14日 19:43

ソース: 『bounce』 263号(2005/3/25)

文/佐々木 俊広

私が生み出すすべての音は結局〈キューバ音楽〉なのかもね


ジューサさん(キューバ代表)
  デビュー前はサルサ・バンドでトレスも弾いていた器用なブラック・ビューティー。現在のキューバ発新感覚サウンドのキー(ウー)マンとして、多忙な毎日を過ごされています

「……そうね、誠意かしら」。
 自分の音楽の最大のポイントはどんなところにあると思う?と、ちょっとイジワルな質問をぶつけてみたつもりが一言でかわされ、逆に一杯食わされてしまった気分。でも、このズバリ的を射た答えは彼女のクールでアツくて(矛盾してるけど、ホントそんな感じ)、それでいて潔いほどにシンプルなサウンドにも通じるものだ。

「いつも具体的に表現しようと努めているの。なかには私の音楽に〈シンプルさ〉を感じないという人たちもいるけれど、日本のみんなと私のあいだには、この点において共感するものがあるんでしょうね。何かをするときに、余計なことはあまりしないタイプなのよ」。

 ジャズやソウル、MPBやヒップホップ、そしてさまざまなタイプのキューバ音楽……。多彩な音楽エッセンスを巧みに消化(昇華)する新世代シンガー・ソングライター/ベーシストのジューサがデビュー・アルバム『Yusa』を引っ提げてシーンの最前線に急浮上してきたのが2002年。前作が真っ白のキャンヴァスに向かって湧き上がるアイデアを抑えきれずに描きなぐった拡大構図だったとするなら、新作『Breathe』はそこから一歩引いた全体構図、という趣。前作の音楽的諸要素はキープしながら、視野の広さが格段にアップした印象だ。

「自分では何も変わらないと思っているけど、気付かないうちに何かが変わっているのかもしれない。というのも、この3年のあいだに素敵な恋愛を経験して、子供を育ててきたから。この経験はとても重要なものだったわ。それと『Yusa』の録音以降に感じたことだけど、ソロ・アーティストとしての音楽的キャリアの成長と、それに伴う責任を忘れることはできない、ということ。日常生活を通して絶えず学んでいるのよ」。

 前作リリース後、世界中をツアーして回り、さまざまなアーティストと共演するなど貴重な体験を重ねてきたことで、「このアルバムにはいろいろなサウンドが必要だと思ってた。それと、私が日々経験した出来事を余すことなく反映したものにしようと思って」という新作のコンセプトの土台が完成。なかでも、ブラジルのレニーニとの出会いは互いに大きなインスピレーションを得たようで、彼がハバナに出向いてジューサとジャムったり(もちろん、新作にもゲスト参加)、逆に彼の最新ライヴ・アルバム『In Cite』にはアルゼンチンの奇天烈パーカッション奏者、ハミロ・ムソットと共にベーシストとして参加。国籍を軽々と飛び越えた〈氾ラテン・アメリカ的〉な猛々しさに溢れたそのグルーヴは、ちょっとほかには類を見ない強烈さだ。

「レニーニの音楽的思考にはとても共感しているわ。彼のバンドの一員でいることは幸福なことよ。でも、つまるところ私が生み出すすべての音は結局〈キューバ音楽〉なのかもね。何故ならば私はキューバ人であり、そうであることに誇りを持っているから」。

 オマーラ・ポルトゥオンドやイラケレ、ロス・バン・バンといった同郷の先達たちをリスペクトしながらも、同時にレッド・ツェッペリンにジェフ・バックリーにカサンドラ・ウィルソン、エリカ・バドゥ、ローリン・ヒル……などなど、とてもこのスペースだけでは列記しきれない膨大な数の海外アーティストからの影響を公言するジューサがいまもっとも共演したい相手は、「ミシェル・ンデゲオチェロ!」。う~ん、納得。

 最後に、こっそり教えてもらった今後の予定(の、ほんの一部)は「ウィリアム・ビバンコというキューバ人シンガー・ソングライターのプロデュース」とのこと。まずは、〈空気を吸って、吐き、生きている〉〈優しく吹く〉といった意味が込められたこの新作をしっかり聴き込みつつ、彼女のネクスト・ステップを待つことにしましょうか!

▼ジューサの作品および客演作品


ジューサがベーシストして参加したレニーニのライヴ盤『In Cite』(BMG Brasil)

▼ジューサが影響を受けたアーティストの作品

インタビュー