まずは、日本の新世代女性シンガー2人といっしょに有力候補の注目作品をチェックしてみましょう!!
軽いステップでさまざまなルーツ・ミュージックにアクセスしながら、2005年現在の〈空気感〉もパックしようとする新世代の女性アーティストたちが世界各地で活躍中。まずこのページでは、彼女たちと近いスタンスを持った永山マキ(モダーン今夜)と山田里香(Bophana)のお二人に集まっていただき、候補アーティストの作品をいっしょに聴いてみることにしました。彼女たちとの共通点を探ることで、〈新世代〉たる所以が見えてくるかもしれませんよ。では、さっそく対談のスタートです!!
――まず、ジューサの『Breathe』を聴いていただきましょう。彼女はキューバ出身なんですが、島外のいろんな音楽から影響を受けています。
里香「声がイイですよね」
マキ「うん、心から歌っている感じがします。コード感もすごくおもしろい。次にどんな展開がくるんだろう?って、聴いているとワクワクしてくる」
里香「うん、それとアフリカっぽさもすごく感じますね」
マキ「母体となっているのは伝統的なキューバ音楽なんだろうけど、いろんなものを吸収して、それを自分なりに解釈してやってる感じがする。私も日本語の美しさとか今っぽいコードとかを考えてやってるんだけど、そのうえでジャズやボサノヴァを聴いたりしてるので、自然と自分なりの解釈になってしまう。そういう点で私との共通点を感じますね」
里香「いまのマキさんの話を聞いて〈おおっ!〉と思いました(笑)。私も古い土着的なサンバとか好きなんですけど、自分でやると、どうしても今のテイストが入ってくる。日本人ってその音楽を深く掘り下げようとする気質があると思うんですけど、ウチらのバンドってそういうのがちょっとイヤだな、というのがあって。みんな土着的なものを愛しているけど、掘り下げすぎると排他的な意識が出てきちゃう気がするんです。そのぶん歌うときは、より抑揚をつけて、曲の世界を表現するようにしています」
――次はケレン・アンの『Nolita』を。彼女は〈フランス人アーティスト〉とされていますけど、いろんなバックボーンを持った人なんです。
里香「この人、けっこう好きなんです」
マキ「声がイイですよね、優しい声」
――やっぱり、最初に歌を聴きます?
マキ「それもありますけど、私は1曲1曲のなかの物語の流れ方を聴いたりします。曲を書いていくことをストーリーテリングのような感じで捉えているんですよね。……いいですね、ホットミルクみたいな音楽」
――次もフランスのアーティストでエミリー・シモン。この人はかなりビョークから影響を受けていると思うんですが。
マキ「……ああ、確かに(笑)」
里香「最近、CDを聴かせてもらって、その人の出身国を聞いてビックリすることが多いんですけど、全体的にそういう傾向があるんでしょうね。ブラジルでもヒップホップやパンクが流行っていて、いわゆる昔っぽいサンバをやっている若い人って少ないし。現地の人たちは幼いときから打楽器の練習をしたりして体内リズムみたいなものを鍛えてるんでしょうけど」
――そういうものにコンプレックスを感じることはありませんか?
マキ「本当にサンバをやろうとしたら勝てないと思いますよ。でも、ブラジル人になろうとしてやってるわけじゃないから。憧れはありますけどね」
里香「わかります。〈なんでブラジル音楽なの?〉ってよく訊かれるんですけど、理由はないんですよね。イイからやりたい。言葉がわからなくてもグッとくる部分があるから」
マキ「音楽ってもうひとつの言語だから、言葉がわからなくても誰に教わったわけでもないのに〈哀しい〉とか〈楽しい〉という表現は理解できますもんね」
――では、次はブラジルのフェルナンダ・ポルトを。これまでブラジリアン・ドラムンベースのディーヴァのような扱いをされてきたんですが、今回の新作『Giramundo』ではもっと幅広い音楽に挑戦しています。
マキ「……いろんな要素が混じってるんですね。モロにロックだったりレゲエだったり」
――ロックは聴きますか?
里香「私、レディオヘッドは大好き(笑)。最近はブラジル音楽ばっかり聴いてますけど、でも好きなものって変わらなくて。〈歌いたいもの〉と〈好きなもの〉は違うところもあるんです。昔リズム&ブルースを聴いていたときにも、〈自分で歌いたい〉から歌詞カードが付いたCDを買ったりしてた」
――永山さんはお父さまがジャズ・ギタリストだったんですよね。どんな音楽環境だったんですか?
マキ「日曜日になるとお父さんが弾くギターが聴こえてきて、いっしょにピアノを弾かされたりしてました。それでちょっとジャズが嫌いにもなって(笑)。でも、根は変わらないというか、だんだん好きになってきました」
――ルーツ・ミュージックにはスルッと入っていけました?
マキ「うん、なにも抵抗はなかったですね」
里香「私、昔はボサノヴァがオシャレすぎて聴けなくて(笑)。でも、エドゥ・ロボの“Zanzibar”っていう曲を聴いたとき、〈これがブラジル音楽なの?〉って衝撃を受けました。なので、〈ブラジル音楽だから聴き始めた〉という感じではなくて、聴いてみたらおもしろかったんです」
――最後はアルジェリアのスアド・マッシ。彼女は〈アルジェリアのジョーン・バエズ〉なんて呼ばれ方もされているシンガーですね。
里香「……すごい哀愁ですね」
マキ「弦楽器みたいな、特徴的な歌い方ですよね。魂を歌っている感じがします。私の場合、その人の文化的背景はともあれ、〈魂を歌っている〉ところが見えればグッとくるんです。それがあれば、どの国の音楽でもいいんですよね」
里香「やっぱりスピリチュアルな部分ですよね。どこの国の人でも、ここ(と胸を指す)はいっしょなので」
山田里香さん(Bophana)
小池龍平(ギター/ヴォーカル)、織原良次(ベース)との3人からなるブラジル音楽ユニット、Bophanaのヴォーカル/パーカッション。2003年4月に結成され、都内カフェなどを中心にライヴ活動を展開中。新感覚のアコースティック・ブラジリアン・サウンドを展開したデビュー・アルバム『Bophana』(CHORDIARY)もリリースされたばかり。最新情報は〈www.chordiary.com〉にて!!
永山マキさん(モダーン今夜)
総勢11名からなるラテン/ジャズ・バンド、モダーン今夜のヴォーカリスト。2002年秋より活動を開始し、2003年にはファースト・ミニ・アルバム『赤い夜の足音』でデビュー。永山マキのスケールの大きな歌声と幅広い音楽性が話題となるなか、昨年末にはセカンド・ミニ・アルバム『青空とマント』(MONTEL BLEU)を発表。最新情報は〈www.modern-conya.com/〉でどうぞ!!
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