日本音楽界が誇る(?)ブルース好きが集結!! その魅力ってなんだ?……な~んてことをゆったりと話していただきました(2)
「いい顔をした人たちが揃ってるよね」(TUCKER)
TUCKER「この映画でも黒人の抑圧の歴史とか深刻な話は出てくるんだけど、泣きながらそれを受け止める人はいるのかな?って思う。観る側もいろいろとわかってて楽しめちゃうところがあるはず。今度はどんなボヤキなんだ?って感じで。本気で真に受けると火傷するぞ、っていうのはあるんじゃないかな(笑)。〈フラレた〉って歌詞も、実は〈俺はこんなに恋愛しててモテるんだぞ〉っていうことの裏返しのメッセージなのかもしれない」
moby「みんな確信犯たちですよ(笑)」
コヤマ「音楽の役割として、シンプルなんじゃないですかね。笑いながらド真ん中にストレートを投げているような感じ。そういう強さを感じる。歴史とか背景はいろいろあるわけだけど、ステージに立ったら全然関係なくて、〈今夜は楽しもうぜ!〉ってやっちゃう」
タスク「昔、音楽の本を読んでいた時、ジャズとかは難しいことばっかり書いてあったんだけど、ブルースの本には〈テキトーでええんや〉って書いてあって、そりゃ魅力的やな思った。で、ジョン・リ-(・フッカー)を聴いてみたら、ホンマそのとおりで(笑)」
コヤマ「ブルースのスキの多さって魅力的ですよね。ブルースマンって、実生活では裕福だったとしても、イケてない側の人間を演じている感じがある。女にフラレちまった、とか、やっぱ金は大事だ、とか歌って、客に対して〈俺はお前らと同じ立場だぜ〉とコミュニケーションを計ったりしている。本当は、そういう(性質の)音楽じゃなかったとしたら、もっと発展してるはずなんだけど(笑)。ロックはもっと複雑に進歩してるじゃないですか。ブルースだとみんなそれぞれが煩悩を抱えていて、それも百八つ目とかじゃなく……」
moby「2つ目あたりの、ひとケタ代の煩悩みたいな(笑)」
コヤマ「(笑)で、こんなスキのある人たちがホンモノになる瞬間を観て、震えちゃったりするんですよね。この人たちが毎日ジムに通ってて、菜食主義者で、机の引き出しに歌詞ノートとかが入っていたりしたら感動しないっすよね。いや……それはそれでいいかな(笑)」
タスク「(映画のチラシを見ながら)こう眺めると、すごい人生を送ってきた人たちばかりなんやろなぁ……」
TUCKER「いい顔をした人たちが揃ってるよね。それだけで耳に何も入ってこない可能性もあるかもね、顔に圧倒されて(笑)。ヒップホップのDJでも、ターンテーブルの前に立っただけで〈おっ!〉って思わせるオーラを出すヤツっていますからね」
コヤマ「顔でコスる(笑)」
TUCKER「こういうこと言うとなんだけど、〈俺たちはこれだけ音楽の歴史に貢献したんだぞ〉っていう映画じゃないですかね(笑)。〈リスペクト足んねぇぞ、お前ら〉みたいな(笑)。若いヤツらには、〈チャックD、お前が言っとけ〉みたいな(爆笑)。そんな感じがしたなぁ」
――さて、今回のメンツに加えて吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズも出演するライヴは、2005年の1月に行われる。きっとその日のステージ上には〈いい顔〉が並ぶことだろう。では、最後をmobyにビシッと締めてもらおう。
moby「ブルースを軸に、さまざまに枝分かれしていった雑多な音楽が並ぶライヴになるはずですよ。バッパーズも出ますからね、ブルース音楽の多様さがわかるはず。一回踏み込んだら絶対に抜け出せないおもしろさがありますからね、ブルースは」
TUCKER
2003年にリリースした最新作『TUCKER IS COMING』(BANGPAK)で注目を集め、その破天荒なライヴ・パフォーマンスやAIとのコラボレーションなどでも話題となっているエレクトーン奏者。今回は独自の視点からブルースをぶった斬りながら、溢れんばかりのブルース愛を見せつけてくれました!
スクービードゥー
今回参加してくれたコヤマショウ(ヴォーカル)とオカモト“moby”タクヤ(ドラムス)を含む、4人組のファンキー・リズム&ブルース・バンド。最新作『Beautiful Days』(スピードスター)でさらなる新境地を開拓した彼らですが、ブルースにもメチャ造詣が深く、今回もハンパじゃない気合いを持って臨んでくれました!
cutman-booche
金佑龍(ギター/ヴォーカル)を中心に大阪で結成された3人組。BAGDAD CAFE THE trench townらとの共演などで注目を集め、Gラヴを彷佛とさせるそのブルース感覚が巷で話題となっています。先頃リリースされたミニ・アルバム『cutman-booche』(MIRROR BALL/RD)も、飄々としたその語り口がなんとも味わい深い傑作です!!