HERE COMES THE DESTROYER OF STEREOTYPE
EPISODE 01 ーー ディスコ・パンク
新しい音楽が生まれる瞬間。そこには既存のカテゴリーをブチ壊し、未踏のエリアへと飛び込む破壊者たちの姿があった。そんな彼らの挑戦とエクストリームな音楽を紹介するデストロイヤー列伝がスタートだ!!
破壊主義ライター(?)による〈ディスコ・パンク〉事情トークバトル!!
──さて、今回お二人に集まってもらったのは、昨今のミュージック・シーンを騒がせている〈ディスコ・パンク〉についてお話を伺いたかったからです。というのも2005年の初頭には、このムーヴメントの一翼を担うDFAの周辺作品がリリースされ、さらに注目を集めそうな気配なんです。まずはじめに、音楽が身近にあるお二人にとって、DFA周辺の動きをどんなふうに受け止めていますか?
KATOMAN(以下:MAN)「DFAのリミックスってさ、元来あったバンドのサウンドをかなりイジるじゃない? だから僕らの世代的には、80年代の12インチ・カルチャーが戻ってきたような印象だよね。もちろんジェイムズ(・マーフィー)と自分はほぼ同じぐらいの世代だし、体験してきた音楽も似てるからなおさら思うのかもしれないけど、妙な親近感があるよ」
池田義昭(以下:IKE)「僕はエレクトロクラッシュと彼らが同列に語られているのは、どうなのかな?と思っています。〈ディスコ・パンク〉は、ダンス・ミュージックとパンク・ロック、どちらの系譜からでも捉えることができるサウンドだと思いますし、だからこそ、可能性を感じています」
──しかし、新鮮なカテゴリーではないと?
IKE「それほど感じません。〈ディスコ・パンク〉と呼ばれているサウンドは、以前からあったようにも思えますし。クラッシュがダンス・ミュージックをやったときのほうが新鮮な感じがした。ムーヴメントになるかどうかは、ちょっとわからないなぁ。ただ、〈ディスコ・パンク〉単体として確立する可能性より、ダンス・ミュージックの一部、もしくはパンク・ロックの一部になる可能性のほうが高いような気がします」
MAN「そうそう、あの界隈がザワザワし始めてからもう5年が経っているわけだからさ、〈新鮮さ〉はないと思うな。だけど、そういう期待の仕方じゃなくって、純粋に彼らのメロディーや優れたプロダクションを感覚的に楽しんだほうがハッピーだよ。むしろ、パッと盛り上がってすぐに忘れられるようなムーヴメントのほうが空しいからね」
──そもそも、NYのDFA周辺をはじめとした昨今の〈ディスコ・パンク〉が盛り上がるきっかけになったのは、どのあたりにあったとお考えでしょうか?
MAN「特にNYのシーンだけを意識していたわけじゃないから断言はできないんだけどさ、広く彼らのサウンドが届くきっかけになったのはやっぱ、ラプチャー“The House Of Jealous Lovers”の12インチ・シングルだったんだと思う。あそこからドーンと行った感じだよね」
IKE「僕もとりわけNYを意識していたわけじゃなくて、トレヴァー・ジャクソンがプレイグループ名義で!K7から発表したミックスCDがきっかけでした」
──では、その〈ディスコ・パンク〉というカテゴリーを定義付けるものがあるとしたら、それはどんな要素になるのでしょうか?
IKE「ズバリ、ディスコでパンクな態度と音!」
MAN「(笑)それだけじゃ不親切なんじゃないの!? えーと、いまの〈ディスコ・パンク〉っていうカテゴリーは、ラプチャーやレディオ4、!!!などのように、元々はハードコアやパンクのシーンにいたバンドが、さらにハウスやダブなどへ接近した形なんだと思うよ」
──ということはやはりパンク・ロックという存在が、彼らの音楽活動の軸になっていると……。
MAN「そうそう。ストイックなハードコアやパンクのシーンからキャリアをスタートさせたわけなんだけど、ある程度そのシーンで経験を積んで、ある時期からヴェクトルの方向を180°変換させていった人たち。さらにみんなで踊れて、みんなで楽しめる音楽へ向かうっていうね(笑)。はっきり言って、〈ディスコ・パンク〉って呼ばれているバンドは、ほとんどが10年以上のキャリアを持ったヴェテランだしね。でもさ、これまであったストイックな方向の真逆をめざすってことは、それはそれでパンクっぽいところなんだけどね」
IKE「うーん、でも僕はちょっと考えが違っていて、パンクに対して愛を感じるバンドもいるし、同時にダンス・ミュージックに対して愛を感じるバンドもいる。さらには、まったくもって両方のスピリットを感じさせないバンドもいる(笑)。とにかく、〈ディスコ・パンク〉ってキーワードに括られようとか、〈ディスコ・パンク〉みたいな音を作ろうとしている時点で、パンク・スピリットを持ったバンドではなくなってる。それは明確ですね」
──現在、パンク・スピリットを表現するためのスタイルが多岐に渡っていると。
MAN「サウンド的なルールなんて必要ないじゃん? パンク・スピリットっていうのは、常に時代の主流に反するところから沸き上がるものだと思っているし」
IKE「そうそう。型にはまったスタイルならばまったくもって必要ないし、時と場合によっては、無音でもパンク・スピリットは表現できるからね」
──なかなか深い話になってきたところで恐縮なのですが、時間となってしまったみたいです。それでは最後に、この連載のテーマでもある、ステレオタイプを破壊してきた危険なデストロイヤーを挙げていただけますか?
IKE「全部を挙げるのは難しいけど、すぐに思い浮かぶものを挙げていくなら、完全なるオリジナルだったという点でゴールディのアルバム『Timeless』。あとは存在、音、すべての面でサンダルズ『Rites Of Silence』かな?」
MAN「クラッシュ、バッド・ブレインズ、フガジ……。とにかく、自分のオールタイム・フェイヴァリットなアーティストは、ステレオタイプだけに留まらず、いつも誰かの価値観を破壊しているね。個人レヴェルでもシーン全体レヴェルでも」
▼対談中で登場したアーティストの作品を紹介