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USシンガー・ソングライターの地域的特色を検証 SINGER-SONGWRITER MAP IN THE U.S.A.

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2004年12月24日 17:00

更新: 2004年12月24日 18:10

ソース: 『bounce』 260号(2004/11/25)

文/岡村 詩野

 歌は世につれだが、歌は地につれ、でもある。とりわけシンガー・ソングライターは、古くからホームタウンでの暮らしのなかから得たさまざまな思いを作品に込めている。ボブ・ディランが『The Freewheelin'』のジャケで恋人と歩いているのはグリニッチ・ヴィレッジだった。スプリングスティーンは『Greetings From Asbury Park, N.J.』でニュージャージー出身であることを誇らしげに歌った。それはすべて〈自分はここにいる〉という主張であり、その〈ここ〉が明確であってこそシンガー・ソングライターの歌はリアリティーを帯びていく。むろん、心の故郷でもいい。架空の街でもいい。だが、近年、大都市に移らず地元で活動を展開する歌い手が増えているのを見ると、街を背景に歌ってこそシンガー・ソングライターなのではないか、という気もしてくるのだ。

BOB DYLAN 『The Freewheelin'』  Columbia(1963)

  フォーク時代の彼はマンハッタンのコーヒーハウスが〈故郷〉だった。だが、アコギを手にそこから世界を見渡していた彼は、本作以降ホームタウンを〈風の中〉に求めるようになる。風に吹かれて歌い続けていくことを決意したディランには、もはや街としての故郷は必要のないものとなっていたのだ。

LAURA NYRO 『New York Tendaberry』 Columbia(1969)

  私的な感情を表現するシンガー・ソングライターのなかでも、このNY出身の彼女はより寓話性の高い作品を作り上げた一人。本作ではほぼピアノを相手に歌を綴っている彼女だが、結局彼女にとってのNYは心の拠り所でもあり、淋しさを実感させる場所でもあった。

ELLIOTT SMITH 『Either/Or』 Kill Rock Stars(1997)

  ネブラスカ出身だがオレゴン州ポートランドで活動開始。メジャー以降は室内楽的なアレンジを施した作品などもあったが、インディー期のソロ作には、ラフで武骨な作風ながら地方都市で花開かせた彼の静かな頑固さを感じ取ることもできる。遺作もこの時代の感触に近い。最後まで彼は地方人だったのだ。

JONATHAN RICHMAN 『Not So Much To Be Loved As To Love』 Vapor(2004)

  マサチューセッツ出身のアーティストに地元の誇りは?と訊ねると、たいていこの男の名前が挙がる。ヴェルヴェッツを追いかける情熱を持ちながら、ストラトキャスターへの偏愛を飄々と歌う男。その不気味な存在感は、ボストンにいまも連綿と受け継がれている。

JOANNA NEWSOM 『The Milk-Eyed Mender』 Drag City(2004)

  ネヴァダシティのコミューンで受けた自然教育。テリー・ライリーらに可愛がられた子供時代。そんな幼少期の自由な発想が、ギターやピアノではなくハープを選んだ。ボニー“プリンス”ビリーが共感を寄せたのも当然のこと。鳥のさえずりのような歌声はまさしく育った環境の賜物。

TIM BUCKLEY 『Goodbye And Hello』 Elektra(1967)

  フランク・ザッパの尽力でデビューし、1作目にはヴァン・ダイク・パークスらが関わっていたので西海岸のイメージがあるが、この2作目はラヴィン・スプーンフルのジェリー・イエスターがプロデュース。すなわち彼がワシントンDC=東海岸出身で、その人脈にあることを裏付けた作品。

JOHNNY CASH 『The Essential』 Columbia

  カントリーとフォークの橋渡し的な役割を果たしながらも、常にアウトローを貫いた男。監獄に身を置いたこともある。〈黒衣の男〉と嘘ぶくこともある。けれど、彼は根無し草であることを恐れなかった。根無し草が自分の居場所であると実感していたからだろう。オルタナ勢から尊敬されたのも当然だった。

DEVENDA BANHART 『Rejoicing In The Hands』 Young God(2004)

  目下、最注目。デモ並みにロウファイな弾き語り中心だが、世界を転々としたという放浪人生が、浮世離れした視点とやや宗教色強い歌詞に結実している。元スワンズのマイケル・ジラのレーベルからデビューしたが、本作でマッスル・ショールズ人脈とも繋がった。

WARREN ZEVON 『Wanted Dead Or Alive』 Capitol(1970)

  ロシア移民の子であることが、この男にならず者の歌を歌わせたのだろう。ジャクソン・ブラウンやイーグルスのメンバーとの交流から西海岸人脈の一人として捉えられることも多いが、彼の心は常に〈疎外感〉に包まれていたのではないだろうか。シカゴにはさまざまな人種が暮らしている。

BONNIE “PRINCE”BILLY 『I See A Darkness』 Drag City(1999)

  デヴィッド・パホらと共にケンタッキー州はルイヴィルという街に新たな脚光を集めさせたこの男。アメリカーナ・テイストが強い、ドス黒くドロリとした感触の歌は、その後、本作のタイトル曲を取り上げたジョニー・キャッシュの魂を奇しくも受け継いだものでもある。

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