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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2004年12月16日 16:00

更新: 2004年12月16日 17:45

ソース: 『bounce』 260号(2004/11/25)

文/轟 ひろみ

モス・デフの〈ブラック・ロック〉


 問題作――そんな形容が妥当かはわからないが、ある種のイメージを持ってその作品を手に取った人を面喰らわせるという意味では、間違いなく問題作と呼んで差し支えないだろう。モス・デフのセカンド・ソロ・アルバム『The New Danger』は、ブラック・スターでの活動や前作『Black On Both Sides』によって一部のリスナーに抱かれたある種のイメージや期待に完全には応えない作品になっている。いわゆるストリクトリーなヒップホップ・アルバムではなく、これはカッティング・エッジなバンド・サウンドによる作品なのだから。

 ただ、パーマネントなバンドのブラック・ジャック・ジョンソン(黒人初のボクシング世界ヘビー級王者、ジャック・ジョンソンから名を取っている)を率いたここ数年のモス・デフの活動を何とはなしにでも追いかけている人なら、彼の新たなヴィジョンがようやく(作品という形で)全貌を現したことに興奮を禁じ得ないはず。同時期に新作をリリースしたブラック・スターの相棒、タリブ・クウェリとは好対照な仕上がりなのもおもしろいところだろう。バンドのメンバーは、Pファンク軍団のトランス鍵盤奏者=バーニー・ウォーレル(キーボード)、リヴィング・カラーのウィル・カルホーン(ドラムス)、そのリヴィング・カラーに参加していたこともあるダグ・ウィンビッシュ(ベース)、そしてバッド・ブレインズのゲイリー・ミラー(ギター)……という〈ブラック・ロック〉の猛者たちだ。

 さて、そんな問題作の幕は、ラファエル・サディークのプロデュースした“The Boogie Man Song”で切って落とされる。ラファエルがギターとベースでサポートし、ドス黒いバンド・サウンドに乗せてモス・デフが妖しく口を開く。ソリッドなギター・リフやエレクトロの残像を身に纏いつつ、しなやかにライムしていくモス・デフが格好いい。そんななかでも際立っているのが、シュギー・オーティスをフィーチャーしたブルース・ナンバー“Blue Black Jack”。艶めかしく歌いかけるセックス・ソング“The Panties”も興味深い。他の曲もカニエ・ウェストやサイコレス(ビートナッツ)、ミネソタらヒップホップのトラックメイカーがプロデュースにあたっていることもあり、単なる何かの模倣には終わっていない。モス・デフのこれまでの活動を踏まえたうえでの、新しいブラック・ロック・サウンドが展開されていると言えるだろう。恐らくはアウトキャストのアンドレ3000盤に大いに触発されたのではないか、とも思うのだが、これはオルタナティヴというより、モス・デフなりのヒップホップな〈ブラック・ロック〉宣言なのだと思う。『The New Danger』は甘く危険なアルバムだ。

▼『The New Danger』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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