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そして2004年──通算8作目となる新作『寂 -jaku-』でさらなる新境地を開拓するDJ KRUSHを直撃!!

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2004年11月18日 14:00

更新: 2004年11月22日 12:48

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/一ノ木 裕之

HERE COMES THE TURNTABLE WIZZARD!!

 「例えば監督が思ってる〈黒〉と僕が思ってる〈黒〉は違ったりするわけじゃないですか。お互い住んでる国も違うし、極端な話、僕がすごく暗く思えるものを向こうは明るく感じたり。そこでの照らし合わせのやりとりがすごくおもしろかった」――これは、昨年DJ KRUSHがサウンドトラックを担当した、写真家・荒木経惟を追った海外ドキュメンタリー「ARAKIMENTARI」の作業について語ったものだけれど、〈監督〉の部分に〈リスナー〉という言葉を当てはめれば、それはDJ KRUSHの今までのキャリアとそのまま重なることになるだろう。

 ヒップホップという言葉すら認識されてない当時のメジャー・カンパニーに到底理解されぬまま、「日本で思いきり勝負すればするほどすごく寂しくなるしダメだと思った」というKRUSH POSSEが92年に解散。それまでクラブDJとしても客を踊らせてきた彼はソロ活動へと踏み出すにあたりみずからの〈リスナー〉を海外へと求め、UKのモ・ワックスからリリースされたセカンド・アルバム『Strictly Turntablized』でそれを実現させた。わずか一週間のレコーディング期間(!)で導き出されたというこのアルバムを機にヨーロッパをはじめとする海外で徐々に認められていくなか、その音楽は彼の意識とは別のところでしばしば〈日本的〉と評されたという。セカンド・アルバム以降のヴィジュアル面やアルバム・タイトル周りの感性にそれははっきり示してあるようにも思えたが、彼にとってそれは〈フロム・ジャパン〉という出自が結果的に表われただけのもののようだ。

「日本的な感性を意識して音楽を作ってなかったよね。子供の頃から尺八とか、そういう音楽も聴いて育ってないし。だけど、〈どこがそう感じるの?〉ってヨーロッパの人に訊くと、〈間とか空気感〉って言われて。〈それはワビサビっていうのか?〉みたいな」。

 そんなDJ KRUSHがここに初めて、日本=〈和〉を中心テーマとした新作『寂 -jaku-』を完成させた。自身8枚目を数える本作にしてKRUSHの背中を押したのは、他ならぬキャリアを重ねた自負だった。

  「年齢のせいもあるけど、ここ10年ぐらいで25か国50箇所以上の都市に行って客観的に自分の国のことが冷静に見られるようになってきたから、そろそろ正面きって自分の国の伝統楽器といわれるものと向かい合ってもいいかなっていう自分がいて。昔はもっと自分の枠が小っちゃかったから入らなかったんだけど、今だからやっと自信を持ってできるようになったんだよね」。

 邦楽界から三味線や和太鼓、尺八などのミュージシャンたちが、そしてジャズ界からも坂田明らが招かれたばかりか、USのラッパーであるエイソップ・ロックやMr.リフらまでもゲストに名を連ねるのは、彼の言う〈和〉が〈平和・調和〉をも意味するものだからだ。NYのワールド・トレード・センターがテロで崩壊することとなったわずか2日前、まさにその下で雑誌取材の写真撮影をしていたKRUSH個人の記憶と今作は、〈9.11〉以降の思いとして分かちがたく結びついている。結局のところ、音楽にはバリアなどないんだという究極の考えとともに。

「ラップにしても尺八や三味線にしてもなんでもそうだけど、行こうとしてるところ、〈いいよね〉っていうところは同じ音を出す人間として年齢とかとも関係なく同じなんだなって。僕なんかより全然(歳が)上の森田(柊山、尺八奏者)さんとライヴを回ってきたんだけど、駆け引きという点ではラッパーとやってるのと同じで、共有できる部分がすごくあるのを感じたし」。

 バリアを越えた先にあるDJ KRUSHの〈ヒップホップ〉がどういうものになるのか、それは時が教えてくれるだろう。

▼『寂 -jaku-』に参加したアーティストの作品を一部紹介

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