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チャイニーズの星にして名うてのバトルMC、ジンがついにデビュー!! ENTER THE DRAGON

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2004年11月11日 13:00

更新: 2004年11月11日 18:13

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/高橋 荒太郎


〈チャイニーズがラフ・ライダーズの一員としてデビューする〉──この話をだいぶ前に聞いた時には、驚くと同時に懐疑的にならざるを得なかった。ジェット・リーが銀幕で活躍しているとはいえ、アジア人がUSエンターテイメントの第一線で活躍するには、人種的支持や共感が得られにくいという、実力とは別のいかんともしがたい外的要因が壁となって大きく立ちはだかることが明白だからだ。だが、この若き中国人ラッパー、ジンは必ず問われるであろうこの種の問題にも気負いなく答える。

「オレが中国人だから注目されている、って思われてる部分はあるみたいだけど、それはさして気になることじゃないよ。なぜならそういったことはどこにでもあることだから。自分が中国人のヒップホップ・アーティストということで注目されているのは事実だし、そういう意味では自分にとっては凄くポジティヴなエネルギーになっているよ」。

 ハードなストリート・ライフがシンパシーを呼ぶこの世界で、異なった生活文化で育ってきことに対してはどう考えているのだろう。

「やっぱりヒップホップは特定の人種の作り出したものだし、その創造過程にはいろんな文化的、歴史的背景があったと思う。だから自分はそういう基本概念を理解したうえでヒップホップをやることが、そういった層のリスナーに受け入れてもらうには重要だと思っているよ」。

 客観的で冷静な語り口は、自分の実力に対する絶対的な自信の表れだろうか。ジンがBETのフリースタイル・バトルを7週連続で勝ち抜き、レコード契約したことは有名な話だ。周囲を黙らせるだけの結果を出し続け、自分のスキルの優性を証明してきた。過去にもフリースタイルの実績を売り文句にデビューしたアーティストはいたが、その多くは商業的な成功へ繋がらなかった。ただ、そういった経歴のみから、ジンのファースト・アルバム『Rest Is History』に先入観を抱くのは大きな間違いだと思う。

「フリースタイルとレコード用のリリックを書くことに〈違いがある〉という固定観念を壊そうという意識はずっと持っているよ。リリックっていうのはもともとフリースタイルから産まれるもので、それを紙に書き残すことは作品を作る時の一連の作業に組み込まれているんだ。フリースタイルは言いたいことがあって、それを画家のようにカンヴァスに瞬間的に描くことが重要だと思う。その反面、レコードを作る時はマネージメントやプロモーションのスタッフと力を合わせることも大事だし。フリースタイルは自分でできるけど、商業的に成功する作品は自分ひとりの力じゃ完成しないってことさ」。

 また、「制作には特にガイドラインとかはなくて、インスピレーションに任せて作った。ただ、ジンのここまでの道のりっていうのが主なテーマになっていると思う」と話すアルバムの内容は、オールド・スクーラーの45キングからカニエ・ウェストまでを起用するといった具合に、普遍性と時代性を兼ね備えた素晴らしい内容だ。“Learn Chinese”のように中国的なテイストの入った曲ももちろんあるが、多感な時期を過ごし「そこでの生活は個人として、アーティストとしてのジン、両方に影響を与えている」というマイアミ/フロリダからの影響を感じさせる“Seniorita”など、全体的に現在までのジンの生活や歩みが反映されている。

「すべてを成し遂げたわけじゃないし、まだまだ勉強しなきゃダメなこともある。音楽的にも人間的にも成長段階なんだ」と謙虚に話す一方で、「いずれ、ウィル・スミスやLLクールJみたいにいろんなことが表現できるアーティストになりたい」と大きな夢も貪欲に語る。すでに映画「ワイルド・スピード×2」に出演し、銀幕デビューも済ませたジンの持つ限りない可能性は、同じアジアの人間としても目が離せないほど刺激的だ。

▼『Rest Is History』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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