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特集

栄光を掴んだファット・ジョーとテラー・スクワッド BIG APPLE

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2004年11月11日 13:00

更新: 2004年11月11日 18:13

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/高橋 芳朗


「ぜんぜん予想してなかったね。頭のリリックからして〈I don't give a fuck about your faults or mishappens nigga/We from the Bronx, New York, shit happens〉だぜ? 大体ウケようなんて気持ちはこれっぽっちもなくてやった曲なんだ。それがこんなに売れちまって……クレイジーだぜ! クラブに行けば一晩に30回くらいかかるし、ラジオでもずっと流れてるからな」。

 確かに衝撃的なニュースだったけれど、いちばん驚いているのは当の本人なのかもしれない――ファット・ジョー率いるテラー・スクワッドのセカンド・アルバム『True Story』からカットされたシングル“Lean Back”は、あれよあれよという間に全米チャートを制してしまった。上機嫌なファット・ジョーのコメントはいささか誇張気味ではあるものの、かといって大袈裟すぎるというわけでもない。NYのヒップホップ系ラジオ局は東海岸勢の久々の快挙を祝うように“Lean Back”をスピンし続け、その興奮はエミネム(みずから志願しただけあって素晴らしいパフォーマンスを披露している)やメイス、リル・ジョンらを加えたリミックス・ヴァージョンの登場によってさらに高まりつつあるようだ。

「マジでこの曲はヒップホップ史上でいちばんデカいヒットなんだ。もう18,000回もラジオでオンエアされてるんだぜ。50セントの “In Da Club”を軽く追い越したよ。こんなモンスター・ヒットが出ちゃったら、いったいこの後どうすりゃいいんだよ!」。

“Lean Back”は〈歴史上最大の商業的成功を収めたハードコア・ヒップホップ・シングル〉として語り継がれていくことだろう。確かに50セントの “In Da Club”もセンセーショナルだったが、エミネムやドクター・ドレーの後ろ盾がある彼とテラー・スクワッドでは立場が違いすぎるし、そういった意味でも実に価値ある一発だ。

「最初にビートをもらった時からヤバいって思ったね。このビートでラップするのが怖くなって4か月くらい手を付けずにいたんだ。当時はショーン・ポールがすげぇ盛り上がっててさ。彼はレコードの内容が良かったこともあるけど、プロモ・クリップとかに出てくるセクシーなダンサーたちの踊りも無関係じゃないって考えてたんだ。俺たちも対抗する何かを編み出さなくちゃ……って思って、それで出来上がったのが〈My niggas don't dance we just pull up our pants/And do the rockaway, now lean back, lean back~〉ってフックなんだ」。

 勢いに乗るテラー・スクワッドは今後アーマゲドンやトニー・サンシャイン、レミー・マーティンらのソロ・アルバムを予定している他、来年早々には首領ファット・ジョーの3年ぶりとなるソロ新作も控えている。タイトルは『Things Of That Nature』。間もなく完成を迎えるアルバムにはティンバランドやスウィズ・ビーツ、R・ケリー、スコット・ストーチといったプロデューサーが起用されているという。

「今回のアルバムはクラシックだぜ。これまでのベスト中のベストだ。前々作の『Jealous Ones Still Envy』は150万枚も売れて、言ってみりゃデカいリンゴを喰ったって感じだった。その後に出した『Loyalty』は俺に言わせればベスト・アルバムだったのにあまり売れなかった……つまり、せっかく美味いリンゴを喰ったのに吐き出したような後味の悪さがあったんだ。でも“Lean Back”が大当たりしたからな。このまま突進って感じだね。リンゴは俺のもんだよ!」。

 間違いなくいまの〈ビッグ・アップル〉はファット・ジョーのものであり、テラー・スクワッドのものだ。意外な連中の快進撃によって、NYのヒップホップはにわかに活気づいてきている。

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