ファボラスはもはや〈次世代のスター〉ではない
BIGGER AND DEFFER
ファンが求めてるものはわかってる
「ただ、良い音楽を作ろうとしてるだけだよ。俺としては特にチャートを狙ったりはしてないんだけどね。良い音楽を作って、その結果としてチャートに入ったって感じかな」。
ここ日本においてはまだまだ〈新進ラッパー〉との印象が強いファボラスだが、本国USにおいてはすでに確固たる地位を築きつつある。2001年のデビュー・アルバム『Ghetto Fabolous』と昨年のセカンド・アルバム『Street Dreams』の両作品からカットされたシングルはすべてビルボード誌のヒップホップ/R&Bチャートで20位以内にランクしているほか、“Can't Let You Go”と“Into You”に至ってはいずれもポップ・チャートで最高4位にまで昇り詰めている――これはピティ・パブロやババ・スパークスら〈2001年デビュー組〉のなかにあっては突出した活躍であると評価できると思うし、それどころか超一級のヒップホップ・アーティストと比較しても何ら遜色のない成績だろう。こうした状況を踏まえると、企画アルバム『More Street Dreams』を挟んでの待望のサード・アルバム『Real Talk』をもって、ファボラスの人気は一気にピークへと達することになりそうだ。
「『Real Talk』(=本音)ってタイトルだけど、必ずしもシリアスなことばかり言ってるわけじゃないんだよ。前作に比べていろいろなテーマを扱ってるし、上手く釣り合いの取れた作品に仕上がったと思う。音楽的にもサウスやウェストのエッセンスを取り入れたからヴァラエティー豊かなアルバムになったね」。
このあたりの絶妙なバランス感覚こそがファボラスを成功へと導いた最大の要因になるのだろうが、今回のアルバムの制作にあたってはさすがに“Can't Let You Go”と“Into You”の2大ヒットを意識しないわけにはいかなかったようだ。
「うん、それはあるよ。ストリート・ヒップホップを聴かないような人たちや女性ファンにもアピールできたことは自分のキャリアにとって凄くプラスになったと思うからね。ファンが求めているものはわかってるつもりだし、ああいった曲はやっぱりやらないといけないと思ったよ。今回のアルバムだと、マイケル・ジャクソンの“I Can't Help It”を使った“Baby”とか、リル・モーといっしょにやった“Holla At Somebody Real”がそれに該当するんじゃないかな」。