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特集

ニュー・ソウルからネオ・ソウルへ

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2004年10月21日 13:00

更新: 2004年10月21日 16:55

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/林 剛

The Continuous...

〈ネオ・ソウル〉という言葉は多分に感覚的というか、レコードを売り出す/紹介するための業界用語であって、そうカテゴライズされているアーティストの間でも賛否両論ある。けれど、呼び方はともかく、そういうネオ・ソウル的なシーンが少なからず存在していることは否定できない。

  その源泉を辿ってみた際、よく比較対象に挙がるのが、いわゆる〈ニュー・ソウル〉。そう、ダニー・ハサウェイ、カーティス・メイフィールド、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダーらを中心に70年代初頭に沸き起こった新しいソウルのムーヴメントだ。一般にその特徴は、現在のネオ・ソウルがそうであると言われるように、自作自演で、パーソナルな感情を押し出した音楽とされる。だが当時の感覚だとニュー・ソウルは70年代に入って登場した文字どおりの〈新しいソウル〉全体を指すもので、フィリー・ソウルをはじめ、アル・グリーンやアイズレー・ブラザーズなどの音楽も含めて、そう呼ばれていたという。

  ともあれ、そういう広い意味での〈ニュー・ソウル〉からの影響を強く感じさせたのが、ディアンジェロやエリカ・バドゥ、エリック・ベネイ、マクスウェル、トニー・リッチといった、90年代中盤に登場した自作自演派のR&Bシンガーだった。彼らのどこか孤高な佇まいはまさにダニーやカーティスらを連想させるもので、やがてそれらは、〈ニュー・ソウル〉の間に〈クラシック〉を挟んだ〈ニュー・クラシック・ソウル〉というタームで括られるようになる。もっとも、こうしたソウル・ミュージック原点回帰的な動きは80年代にも〈レトロ・ヌーヴォー〉という地味なブームとして現れたのだが、ディアンジェロたちが違っていたのは、彼らがヒップホップ世代であるということだった。プリンスやシャーデーなどからの影響も色濃く、こうした現在進行形の音楽体験を通して彼らは過去(70年代)のソウルに自分たちのルーツを見い出すようになる。具体的には、サンプリングやプログラミングといったヒップホップの常套手法を用いながら、生楽器の音色を加えるなどして過去のソウルやジャズの躍動的なグルーヴを取り戻すというやり方だ。こうしたスタイルは90年代前半からトニ・トニ・トニやルーツ、トライブ・コールド・クエストが早々と実践していたが、ディアンジェロやエリカの作品におけるキーパーソンがラファエル・サディーク、クエストラヴ、アリ・シャヒードという上記3グループにおけるサウンドメイキングの要だったという事実は興味深い。この3者がクリエイターとして多方面にリンクしていくことでニュー・クラシック・ソウルのムーヴメントは拡張し、以後メインストリームR&Bに対するアンチな姿勢を強めながら、メイシー・グレイやチェロキーといったオルタナティヴな志向のアーティストの登場を促していく。

  ディアンジェロとエリカのセカンドがリリースされる頃には〈ニュー・クラシック・ソウル〉という言葉は影を潜め、世間では彼らのような音楽を〈オーガニック・ソウル〉などと呼びはじめた。〈有機的〉という意味合いを含むこの言葉は、言ってみれば黒人のルーツ、つまりアメリカ南部やアフリカなどを想起させる土着的で天然な佇まいの自作自演アーティストの音楽を指したもの。インディア・アリーやローネイ、ドニー、エンダンビといった米南部を拠点に活動する人たちの音楽こそ、まさにそうした呼び名に相応しく、彼らの音楽は90年代初頭にアレステッド・ディベロップメントがやっていたことを受け継いでいるようでもあった。一方、これとほぼ同時に使われはじめたのが件の〈ネオ・ソウル〉というターム。こちらも感覚的な言葉だが、あえてオーガニック・ソウルとの対比を図るなら、ネオ・ソウルは〈都会色を前面に出したニュー・クラシック・ソウル〉とでもいった感じか。ジル・スコットらフィリー勢や、アンジー・ストーン、アメール・ラリューなどの音楽を想像してもらえればいいだろう。とはいえ、こうした分類はあくまで便宜上のものに過ぎない。ただ言えるのは、オーガニック~ネオ・ソウルと〈分類したくなる〉人たちが、裏方も含めてメインストリームのシーンを侵食しはじめたということだ。


オーガニック・ソウルの超定盤2。エンダンビの2002年作『Tunin Up & Cosignin』(Cheeky-I)

 その侵食は近年さらに拡がりを見せていて、ドゥウェレのような気鋭がハウスやテクノをかじりつつデトロイトの音楽土壌を豊かにしていたり、レ・ニュビアン、リーアン・ベンソン、イヴァナ・サンティーリなどさまざまな人種/国籍のシンガーがネオ・ソウル系のクリエイターをバックに作品を作ったりしている。ニュー・クラシック・ソウル期に名を連ねたマイロンやエイドリアナ・エヴァンスが自主制作盤ながら復活作を出してくるあたりも、いかにネオ・ソウル的なものが盛況であるかを物語っている。さらにはソウル回帰的なアリシア・キーズの成功もあってか、R・ケリーやアッシャーらのメインストリーム・アクトも部分的とはいえネオ・ソウル的なアプローチを試みていたり、ネリーなんかのラッパーにしてもそうしたグルーヴを追求していたりと、もはや〈ネオ・ソウル〉はアンチでも異端でもなく、現在のシーンの王道である。もう、〈ネオ・ソウル〉という言葉さえ必要なくなるほどに。

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