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久保田利伸=TOSHIのやりたかった音

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2004年10月21日 13:00

更新: 2004年10月21日 16:55

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/林 剛

Soul Togetherness


 NYで活動を始めて10年近く。〈久保田利伸〉が〈TOSHI KUBOTA〉として、これまでに放ったUS制作のワールドワイド・リリース・アルバムは2枚。本人の言葉を借りれば、「ガムシャラに作った1作目」が95年の『Sunshine, Moonlight』で、「少し俯瞰してUS(の空気)に馴染ませながら作った2作目」が2000年の『Nothing But Your Love』だそう。ともに充実した内容とは裏腹にセールス面では苦戦を強いられたが、前作から4年、TOSHIは「US発だからこそやりたいことがある!」と、3作目となるUS制作の新作をリリースしてきた。

「今回はヘンな勢いとか迷いとかがなくて、好きな感じのものを好きな人たちと策略なく作ったので、アルバムを通してわりと素の僕が出てますね。前作は時代のなかでエッジーなものを求めたりもしてましたけど、今回は自分が揺り動かされるものに素直にハマっていった結果、レイドバックしたネオ・ソウル寄りのもの、フィリー的なネオ・ソウルみたいなところに行ったという感じです」。

 そもそも70~80年代ソウルの熱烈な愛好家であるTOSHIにとってネオ・ソウル的なスタイルでアルバムを作ることはとても自然なことだったに違いない。ただ彼は前作でも無意識ながらルーツやラファエル・サディークらとネオ・ソウル的なアプローチをすでに試みている。

「僕が根っから好きなもの……という感じで作っていくと、新旧問わずあきらかにソウル臭いものになるんです。で、今回はフタを開けてみたら人脈的にフィリー・ルーツだった。僕の小さな頃からの音楽の記憶も含めて、そういう知らぬ間の〈フィリー体験〉が巡り巡ってこういうところに帰ってくるというのは不思議な縁ですね」。

 アルバムにはTOSHI本人が作ったトラックをもとにしたカーティス・メイフィールド“Tripping Out”使いの“Breaking Through”という曲があるが、これを含む数曲を手掛けているのが元ATOJのアイヴァン・バリアス&カルヴィン・ハギンズのコンビ。彼らが手掛けたミュージックの曲に惚れたTOSHIが直接コラボレートを申し出たというから、流石だ。

「コイツらだったらサンプリング・ネタの下世話な使い方ができると思って……(自分が作った)デモをフィリーに持っていったらアイヴァンが興奮しちゃって、〈これやらせろよ、グルーヴをトゥデイにしようぜ〉って(笑)。彼らは、まとめ上げる音がちょっと未完成なところがいいんですよね」。

 アイヴァン&カルヴィン以外にも、新作ではTOSHIと共通の感性を持つミュージシャンが必然的な格好で集まってきている。“Living For Today”のトラックを作ったバックワイルドや同曲でラップしているモス・デフ(彼はかつて久保田利伸としての“無常”でも共演)。“Neva Satisfied”の奇抜なビートでアルバムに灰汁(アクセント)をもたらしたアリ・シャヒード・ムハマド。また作詞やバック・ヴォーカルでは、前作にも関わったジャジーファットナスティーズのメルセデス・マルティネスや、元ジャネイのリネー・ネフヴィルなども参加。そんななか、TOSHIが絶大な信頼を置いているのが、前作にも参加し、今回は“Hold Me Down”でTOSHIとデュエットしているアンジー・ストーンだ。ここ最近アンジー絡みの仕事に関わる新鋭のジョナサン・リッチモンドとともに、TOSHIのソウルを真正面から引き出した。

「音作りに関してはヒップホップもR&Bも男社会な状況なのに、アンジーは女性なのに若いヤツを見つけて音作ったりとか、そいつとイイ仲になったりしてますよね。いや、僕は後者ではないですけど(笑)。で、バラードを普通にできるのは、やっぱりアンジーのチームなんですよ。デュエットに関してはアメール・ラリューかジル・スコットかアンジーか最後まで迷ったんですけど、自分のヴァイブと合う結果が作れる人は限られてて、そういった意味ではアンジーみたいに〈味〉で持ってく人がよかったんです」。

 今回も歌詞は全て英語詞。だが、TOSHIのヴォーカルはこれまで以上にスムーズで説得力に溢れ、リスナーの国籍や世代を選ばない、まさにワールドワイドな内容の作品に仕上がった。

「歌詞には自分のアイデアで〈Unity〉とか〈Share〉っていうキーワードも入れているんです。ただ、それはサブリミナルな感じで、本当は純粋に音楽そのものを楽しんでほしいので、アルバム・タイトルに〈Time To Share〉、つまり〈分け合うことをもう一度考え直したい時だ〉ってことをドンと置いたんです。メッセージ的ですけど、でもアルバム全体はロマンティックで、そんなロマンティックなソウル・ミュージックの伝統ってところを、誰よりもそういう音楽が好きな僕がやった結果が今回の作品なので……そう、ふたりっきりで聴いてほしいですね」。

 もちろんその相手がいなくても、TOSHIは貴方の味方だ。

▼TOSHIの関連作品を紹介


トシ・クボタのUSデビュー作『Sunshine, Moonlight』(Columbia)

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