私が考えるブルースな一枚 第1回──マーク・アーモンド『Heart Of Snow』
ブルースの定義はさまざま。〈シ〉の音がフラットしてないとブルースじゃないと言う人がいる一方、演歌にブルースを感じる人もいる。最初のブルースマン、ロバート・ジョンソンはクロスロードで悪魔に魂を売って独特のギター奏法を手に入れたと言われているが、救いを捨ててみずから地獄に向かった人間の思いこそブルースってことか? オレのCD棚にもそんなやり場のない思いが充満したブツ発見! 齢47歳の今もゲイ雑誌の表紙モデルをこなすマーク・アーモンドが、20世紀ロシアの有名曲ばかりを救いようのない思いと共に悶々&切々とカヴァーしたアルバム。男声合唱団やオーケストラ、ピアノや透明なエレクトロニカをバックに甘く切ない声で暑苦しく歌い上げ、サハリンの寂れた町に残されたレーニン像のような時代錯誤、重厚長大、無用の長物感。ロシア革命時代の赤軍唱歌から、ソ連時代に抑圧されたロック・バンドやジプシー楽団との共演、体制側に愛された女性歌手とのデュエットを並べた選曲も、ソ連の同志たちが聴いたら悪魔に魂を売るような行為。
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