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特集

Spinna B-ill & The Cavemans

原点回帰を経て前へ進むレゲエ列車

 ゴリゴリの筋肉質なのに、しなやかでバネがある――それが個人的なSpinna B-ill & the cavemans観だ。セカンド・アルバムにあたる前作『サントラ』はそのバネの部分が強化されたような、いくつもの音楽的エッセンスを軽やかに採り入れた作品だった。だが、このたびリリースされた新作『Reggae Train』では筋肉のハリがこれまで以上に増強されていながら、同時に前作で手に入れたしなやかさも損なわれていない。だから、ルーツ・レゲエを基盤にしながらファンクやソウルなどの旨味も吸収した彼らのベーシックな魅力がこれまで以上の迫力を持って迫ってくるのである。稚拙な表現だが、Spinna B-ill & the cavemansってこんなにいいバンドだったんだ!!などと改めて思ってしまった。

「『サントラ』でクロスオーヴァー感をムチャクチャ出しちゃったもんだから、〈俺らっていったい何なんだろう?〉ってところまでいったん戻っちゃったんですよね。それで今回のアルバムで〈このメンバーが集まってバンドをやる意味〉というものを探そうとは考えてました。自分たちの原点を思い出したかったんですよ。バンドを組んだときの原点」(Spinna B-ill、ヴォーカル : 以下同)。

 なんとも真摯な発言だが、それだけ『サントラ』というアルバムの存在が彼らにとって大きかったこともあるのだろう。ただ、彼らのその姿勢が今作の成功に繋がっていることは確か。一方ではこれまで以上に日々の生活のなかで感じたことや考えたことが今作にダイレクトな影響を与えていることも特筆すべきポイント。

「レゲエの現場やそうじゃない現場でも活動してきて、ラスタの人たちとも会ったりしつつ、その信仰の意味合いも考えるようになってきた。そんなこともあって改めて人と人の繋がりが大事なんだって思うようになったんです」。

 Spinna B-illは自身のリリックに関して「これまでの2作品は――人に言われて思ったんですけど――内向的なものだった。でも、このアルバムで外向きになったって言われるんですよ」と話す。〈立ち上がったライオン/噛み付けバビロン/捜し出せザイオン/辿り着くから〉という一節が印象的な先行シングル“ライオンの子”も、ハードコアなラスタ・メッセージというよりもありふれた日常生活にすんなりと溶け込むようなカジュアルさがある。だから、誰の心にも響く強さがある。そしてその強さは、これまでの2作品が過去にSpinna B-illが録り溜めていたデモテープを発展させたものだったのとは違い、今作の楽曲の多くが新たに書き下ろされた新曲であることも影響しているようだ。

「メッセージが昔のことじゃなくて、いま思うことしか歌にしてないからフレッシュなんです。ライヴで昔の言葉を歌うと、僕のなかでリアリティーがないんですよ。それよりもいま自分が思うことを、産地直送な感じで歌いたいと思ったんですよね」。

 筋肉質でしなやかでフレッシュ――こう書くとこの『Reggae Train』が無敵のアルバムのように思えるかもしれないが、それも大袈裟じゃない。「僕的には大成功」とSpinna B-illが話す“Over & Over”ではソウルフルな演奏が切ない表情を生んでいるし、下北沢をレペゼンする表題曲は彼ららしいねちっこいファンキー・レゲエ曲に仕上がっていて……などと書いていくとキリがないので、あとはこのアルバムを聴いて確認してほしい。なお、この後には〈横浜レゲエ祭〉の出演も決定している彼ら。最後に、来るべき夏に向けての抱負をどうぞ。

「そうっスね……超アツい夏にしたいですね。実りの秋を前にして、とにかくアツい夏にしたい。ギンギラギンにさりげなく、なく(笑)」。

▼Spinna B-ill & the cavemansの作品。

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2004年07月15日 17:00

更新: 2004年07月15日 17:00

ソース: 『bounce』 255号(2004/6/25)

文/大石 始

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