イントロダクション──〈韓流〉の現状はどうなってるの?(2)
次々と傑作が生み出される韓国映画界
さて、その映画のほうであるが、日本で一般的に〈韓国産〉として認知され人気を呼んだのは、2001年の「シュリ」と翌年の「JSA」だろう。その後もいくつもの映画が日本で上映されたが、前2作と比肩するほどの話題を集めた映画は出ていない。2002年になって「猟奇的な彼女」が日本で好成績を残し、DVDも好セールスを記録したが、〈韓国映画〉といってこの3本以外のタイトルが挙げられることはまだまだ少ない。その意味で映画はTVドラマと比較すると一般的な浸透度はまだまだといえるだろう。実は、これは大変もったいない話なのである。なぜなら韓国映画はおもしろいからだ。ジャンルの多様性、作品の質、個性的で実力のある俳優たち、優秀な監督と、韓国映画界を取り巻く状況は年々上向き傾向にあり、次々と傑作が生み出されている。また韓国国民の自国の映画に対する支持も強い。その要因は、近現代の国内の歴史的変動や、それによって得られた映画製作の自由競争による質の向上、政府による国産映画保護策など、映画を巡るさまざまな背景が韓国映画の人気と質の向上に影響したことも簡単ではあるが記しておこう。
「シュリ」「JSA」の大ヒット以降、「友へチング」が韓国で観客動員数歴代1位を塗り替えるヒットを記録するが、国際的な評価も時を重ねるごとに上昇。イム・グォンテク監督の「酔画仙」がカンヌ映画祭で監督賞を受賞し、日本でも今年2月に公開された「オアシス」はヴェネチア映画祭で監督賞と新人俳優賞を獲得。同様にカンヌの批評家週間ではパク・ジュンピ監督が老人の性生活をテーマとして取り上げた「死んでもいい」がその作品性を高く評価された。また、それまで韓国国内では商業的成功とは無縁ながら国際的評価の高かった異色の才能、キム・ギドク監督の「サマリア」が今年のベルリン映画祭で監督賞を受賞。同じくキム・ギドク監督の「春夏秋冬そして春」は、韓国のアカデミー賞といわれる〈大鐘賞〉で最高栄誉となる作品賞を受賞した後にアメリカでも公開され、全米で公開された韓国映画の歴代興収成績記録を塗り替えるほどの人気を集めている。そして、先日のカンヌ映画祭ではカン・ジェギ監督による「オールド・ボーイ」が見事グランプリ(審査員特別大賞)を受賞し、審査委員長を務めたクエンティン・タランティーノに「最高にグレイトな作品だ! 本当は〈オールド・ボーイ〉にパルムドール(最高賞)をあげたかった」とまで言わしめた。なお、その「オールド・ボーイ」は、今年の大鐘賞では11部門にノミネートされ、5部門を獲得している。
▼文中に登場する映画のサントラを紹介
映画「オールド・ボーイ」のサントラ『Oldboy』(EMI Korea)