耳で聴いたピープル・トゥリー
ソニック・ユースが与えた大きな影響は、ここに一本のトゥリーを生んだ
THE STROKES
『Room Of Fire』 RCA/2003
乾きながらも官能的な、NYという街の匂いが染み着いたギター・サウンド。ストロークスもまた、サーストン・ムーアが敬愛するテレヴィジョンの血を引くダウンタウン・ロッカーズ。〈ロックンロール・リヴァイヴァル〉なんて掛け声が起こる前から脈々と受け継がれてきた、街とロックの密接した関係がここにはある。(村尾)
FENNESZ
『Venice』 Touch/Digital Narcis/2004
実験音楽界でもっとも〈音楽的〉なアーティスト、クリスチャン・フェネス。ほぼ無音のトラックやノイズ一辺倒な作品が溢れる実験音楽の世界において、彼の作品は過激なまでにポップ。ソニック・ユースがロックの世界で実験を行っていたのとはまったく逆の方法論で、彼もまた唯一無比なサウンドを創り上げている。(則武)
YO LA TENGO
『Summer Sun』 Matador/2003
幾重にも織り込まれたギター・ノイズ。そこから沸き上がってくるイマジネーションの揺らめきを掬い上げる〈音像作家〉としてのヨ・ラ・テンゴとソニック・ユース。都市を舞台にしたアートとロックの親密な関係は、どちらも夫婦バンドだからこそ醸し出されるどこかアットホームな佇まいにも通じているような。(村尾)
ナンバーガール
『NUM-HEAVYMETALLIC』 東芝EMI/2002
頼るべきは、みずからのヒラメキと血。そんなバンド運営に関するノウハウにソニック・ユースの影を感じることはできる。しかし、ここに集約されているのは日本人の体内に宿る〈祭りの鼓動〉。その荒ぶるビートやそれを倍加させるタイム感に、フィードバック・ノイズは飾りでしかない。(武山)
NIRVANA
『Nevermind』 DGC/Geffen/1991
メジャー配給というサポートを受け、〈グランジ〉という荒技がUSのミュージック・シーンをひっくり返した決定的な作品。しかしそれは、先にメジャーへ名乗り出たソニック・ユースという〈保険〉があってこそだった。両者の姿を捉えた映像作品「1991:The Year Punk Broke」も見逃し厳禁。(武山)
ART-SCHOOL
『LOVE/HATE』 東芝EMI/2003
日本の〈グランジ原体験世代〉代表が彼ら。サウンド・フォーマットなど、ソニック・ユースとの類似点こそ少ないが、過剰な修飾を廃したリリックやソリッドなギター・サウンドが特徴的。それらが一体となったときの歌の切れ味は、ノイズを操りきった瞬間のソニック・ユースの〈ロック〉にも似て。(武山)
GODSPEED YOU BLACK EMPEROR!
『Yanqui U.X.O.』 Kranky/2002
モントリオールの暗黒音像集団、ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!。弦楽を加えた大所帯のバンド編成で展開するヘヴィーな交響楽は、サーストン・ムーアやリー・ラナルドが関わっていたグレン・ブランカを思わせる重厚なアヴァンギャルド。モグワイやシガー・ロスらとも共振しながらノイズ銀河を構成。(村尾)
MADONNA
『The Immaculate Collection』 Sire
アンディ・ウォーホルにとってのマリリン・モンローのように、ソニック・ユースが選んだイコンがマドンナ。『Evol』では“Madonna, Sean, And I”なんてナンバーを披露していたが、チッコーネ・ユース名義ではアートワークをはじめ、彼女の“Burnin' Up”をカヴァーするなどマドンナへの偏愛がいっぱい!(村尾)