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特集

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2004年05月07日 21:00

ソース: 『bounce』 253号(2004/4/25)

文/増田 勇一

さらに、ここではロックにふさわしいファッションのお勉強。担当はキッスのジーン・シモンズ先生!! うっ、眩しすぎっ!

 今年、デビュー30周年を迎えるキッス。この5月下旬には昨年に続く来日公演も予定されているが、それに先駆け、実に26年ぶりとなるジーン・シモンズのソロ・アルバムがリリースされる。題して『Asshole』。タイトルからして欧米では放送禁止モノだが、それ自体が話題となるのも必至。〈ロックを売る〉ために必要なセンセーショナリズムと、娯楽作品が持ち合わせるべきアソビゴコロの大切さを知り尽くしている彼ならではの命名である。

「バンド活動は特急列車のようなもの。猛スピードで走ることができる代わりに、決まった駅でしか止まることができず、途中下車して本道を逸れた楽しみを味わうことが許されない。それを満喫できるのがソロ活動だ。この作品には私が〈キッスにはあえて持ち込まなかったもの〉が集約されている」。

 いかにも例え話が得意な彼らしい定義づけである。で、実際、この『Asshole』には、キッスの作品ではあり得ないような要素が満載されている。なにしろボブ・ディランとの共作によるメロウなバラードや、生前のフランク・ザッパが遺したアイデアを基盤とする楽曲、キッスにすら重すぎるんじゃないかというほどの超ヘヴィー・ロックから、プロディジーのカヴァーまで収められているのだ。まさに〈1,000の顔を持つ男〉を、音楽的にも実践しているという感じである。

 そんな彼に、いわゆるファッションや身だしなみについて訊いてみると、「私はリッチだ。それは事実であり、そのことを隠す必要はない。だから、わざわざ薄汚れたジーンズで街を歩く必要はない」とのご返答。

「ステージに立つことができるのは選ばれし者。なけなしの小遣いを握り締めてライヴを観にくるキッズの前に、Tシャツ一枚で出ていくことなんて考えられない」なんてことを語っていたのはいまから30年近く前のキッスだが、この2つの発言の意味は、実はそれほど掛け離れていない。要するにジーンは、たとえオフ・ステージであろうと目の前にいるファンを幻滅させたくないのである。

 いまや中国で不動産業まで展開するジーンは、実際、ロック界屈指の大金持ちでもあるわけだが、彼が今回の取材で真顔で語っていたのが〈夢〉の大切さだ。

「人は、貧しければ金持ちになることを夢見るものだ。で、金を手に入れられたならその先にある夢をかなえようとする。そうやって私は夢を追い続けてきたし、たくさんの夢を実現させたいまは、自分の抱いてきた〈憧れ〉をカタチにすることに欲求を向けている」。

 ディランとの共作も、美しい女性と過ごすことも、そしてキッスで成功を手に入れることも、彼にとっては夢であり憧れだった。結局、ロックスターとして成功するために、どんなきらびやかな衣装よりも着こなせなければならないのは〈憧れ〉なのだろう。夢を売る商売をやろうと思ったなら、自分自身も夢を追わなくちゃ駄目ってことなのである。

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