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ジョージ・マイケルインタビュー――ジョージ本人がついに語った!!

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2004年04月22日 18:00

更新: 2004年04月22日 18:36

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/藤本 真由

その愛、社会への眼差し、そして新作『Patience』について……ジョージ本人がついに語った!! BACK IN THE HIGH LIFE

 ニュー・アルバムのリリースに向けて準備中の1月末、ロンドンにてインタヴューに応じたジョージ・マイケル。前作『Older』から何と8年ぶりのオリジナル・アルバム登場となれば、まず誰もが気になるのはロング・インターヴァルの理由だが――?

「待つほうも長かったと思うけど、僕にとっても本当に長い歳月だったよ。『Older』の前にアンセルモ(・フェレッパ:当時の恋人)を亡くして、その後、母にも死なれたからね。2人と死に別れたショックがあまりにも大きくて、なかなか納得のいくような音楽が書けなくなってしまったんだ。昨年になってやっとインスピレーションが戻って、それからはこのアルバムのために必死に働いた。休みは一週間だけ、クリスマスとお正月の間も働いたよ! みんなは僕が怠けてるって思ってたみたいだけど、実際には懸命に努力していて、それだけ余計に長く感じられた年月だった」。

 いとも易々といった風情でヒット曲を連発してきた天才シンガー・ソングライターにとって、思うように曲が書けないというのは想像を絶する苦しみだったに違いない。苦悩の日々の果てにようやく完成したのが、新作『Patience』なのである。

「この題名にはふたつの意味がある。ひとつは、8年も待ってくれた僕のファンは地球上でもっとも忍耐強い(patient)と思うっていうこと。それから、いま世界にもっとも必要な言葉だと思うということさ。西洋と東洋、ふたつの文化は非常に不幸な出会い方をしてしまった。中東の人々にとって、個人が自由を満喫する民主主義というものは、家族の崩壊を促しているようで容易に受け入れ難い文化なんじゃないかな。TVの映像経由で伝えられる我々(西洋人)の生活はひどいものに映るだろうし。それなのに彼らに慣れる時間を与えようとしないのは、非常に傲慢な話だと僕は思うんだ」。

〈対テロ戦争〉後の世界情勢に対する高い問題意識は、表題曲“Patience”やリリース時にセンセーションを呼んだ“Shoot The Dog”、そして、疑問の声を上げようとしない今の若い世代の無関心を〈若者文化の死〉として描く“John & Elvis Are Dead”などの曲からおわかりいただけよう。

 その一方で、両親やワム!時代の相棒アンドリューも詞に登場する“Round Here”、母と自殺したその兄弟を歌った“My Mother Had A Brother”など、身近な人々がしばしば現れ、過去や個人的な思いが率直に語られてゆくのも今作の特徴。そして、不遇の時を支え続けてくれた現在の恋人ケニー・ゴスには、“Amazing”“American Angel”といったスウィートな愛の歌が捧げられている。なかでも“Amazing”は、「ワム!以来もっともハッピーでオプティミスティック(笑)。僕自身非常に気に入っている」曲だそうだ。

「精神的に打ちのめされていた時期、つまり痛みを経験している真っ最中は、人生に直面したり振り返ったりすることなんかできなかったから、自分以外の世界や社会について書いていた。自分自身を見つめるパーソナルな曲が書けるようになったのは、去年、憂鬱な気分から解放されてからのこと。ふたつのタイプの曲があって、まるで分裂症みたいだよね」。

 そう本人は笑うが、両極端のテーマに同じ深度でアプローチできる芸風の広さが、ジョージ・マイケルというアーティストの強みだ。音楽面でもその幅の広さが如何なく発揮されており、スロウなピアノ曲からノリのいいディスコ・チューンまで、曲の内容に合わせての縦横無尽なプレゼンは見事の一言だ。ヴォーカルも、背負っていた肩の重荷を下ろしたかのような素直な響きが印象的で、それだけいっそうストレートに心に届く。

「聴き手の心に何らかの感情を呼び起こすような素晴らしい音楽を作ることを、僕はいつでもめざしているよ。それは最近のポップ・ミュージックの作り手が忘れてしまったことだと思う。何となく口ずさめればよくて、音楽が人の感情の深みに到達できるかどうかなんてみんな関心がないんだ。でも、たとえ軽く聴こえようと、ポップ・ミュージックは人の心の奥深くに入り込めるものだと僕は信じている。今回も特別なコンセプトはなくて、ただ、いいアルバムになれば……とだけ願っていた。これだけ待たせて良くなかったらマズいしね(笑)。でも、人生でいちばん苦労したぶん、ベストな仕上がりになったと思うから、みんなが楽しんでくれることを祈ってるよ」。


『Patience』からの先行シングル“Amazing”(Epic)

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