Janet Jackson
いちばん裸なジャネットのニュー・アルバム!
胸周辺のトピックで大騒ぎの……まあそれはいいや。彼女のニュー・アルバム『Damita Jo』がとうとうリリースされた。
で、ダラス・オースティンによる先行シングル“Just A Little While”のギターが唸る軽快なポップ・サウンドは件の露出事件ばりに衝撃的だったかも知れない。彼女は常にリード・シングルでアルバム全体の感触を予告してきたからだ。ミネアポリス・ファンクと邂逅した『Control』(86年)からはプリンス風の“What Have You Done For Me Lately”が、肉体的なグルーヴを湛えた『Rhythm Nation 1814』(89年)からは“Miss You Much”が、繊細な内面に踏み込んだ『Janet』(93年)からは優美な“That's The Way Love Goes”が、アーティスティックの粋を追求した『The Velvet Rope』(97年)からはジョニ・ミッチェル曲をループした“Got Til It's Gone”が、そしてハッピーなチャームに満ちた『All For You』(2001年)からは80'sノリのダンス・チューン“All For You”が……てな感じで。
だけど、届けられた『Damita Jo』は良い意味で期待を裏切らない、ジャネットらしい作品になっていて、結果的に“Just A Little While”はその予告ではなかった。アルバムには溌溂としたアップから、吐息で象られたスロウまで、過去に培ってきたジャネットらしさをビルドアップしたうえであますところなく表現した印象を受ける……つまりは絶品なのだ。
そんな今作のポイントは、やはりジャム&ルイス独占の制作体制から大幅に門戸が開放されたことだろう。過去にも若干の例はあったが、今回はカニエ・ウェスト、スコット・ストーチといった旬の起用が印象的だ。やはり注目はカニエの手掛けた3曲で、自身のアルバムも放ったばかりの彼は、モニカにアリシア・キーズなど歌モノ仕事を昨年あたりから急増させているバッチリのタイミング。得意のネタ早回しループなど趣向を凝らしてジャネットに挑む様子は聴きモノだ。他にも、ベイビーフェイスが久々にいい仕事をしている点も要注目だし、ユーロ圏からバッグ&アンサーが参加しているのにも驚かされた。そして彼女とは20年近い付き合いになるジャム&ルイスは毎度のフレッシュな仕事ぶりで、今回は長年のファンに向けて“R&B Junkie”なる曲を用意。これは80年代にジャム&ルイスが関与していたタブーの仕事を模したようなサウンドで、ちょっと泣きながら踊ってしまう人も多いはずだ。
さて、今作のタイトル『Damita Jo』は彼女のミドルネームである。そこに何が込められているのか、じっくりと聴き解いていきたくなるような作品だ。
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