SPACE ODAYSSEY
デトロイトの銀河を漂う、音楽の惑星たち……
VARIOUS ARTISTS
『Sun Ra Dedication : The Myth Lives On』
Kindred Spirits(2003) 元アーケストラのフランシスコ・モラが仕切った、リアル土星人サン・ラーのトリビュート盤。リクルースの美しい小品“Paepulsarild”、神がかったチャントのようなセオ・パリッシュの“Saga Of Resi-stance”、さらにモラ率いるアウターゾーン・バンドの曲にはカール・クレイグも助力。これぞコズミック・ソウル!(轟)
INNERZONE ORCHESTRA
『Programmed』 Planet E/Talkin' Loud(1999)
今回の特集で紹介している〈コズミック・ソウル〉の大きな流れは、実はカール・クレイグを起点にしているようにも思えてくる。91年に“4 Jazz Funk Classic”を残している彼がもっともジャズ・サイドに振り切れた姿だとされるこのインナーゾーン・オーケストラは、96年の“Bug In The Bass Bin”で初めて用いられた名義で、ドラムスにフランシスコ・モラ、ベースにロドニー・ウィテカー……など基本的にジャズ系プレイヤーを従えたプロジェクトだ。トーキング・ラウドを経由して登場したこの唯一のアルバムは、スケールのデカいサウンド・トリップが楽しめる名作で、単にジャズとは括れない、テクノやヒップホップを内包した混沌がだだっ広いクレイグの内宇宙に広がっている様子を見て取れる。リクルースやラックス、リッチー・ホウティンらも参加。この後に続々と登場してくる〈コズミック・ソウル〉作品にとっては辿るべき道程、というかミルキーウェイを示したとも言えるアルバムだろう。(轟)
KEVIN SANDERSON
『KMS Definitive Mix Compilation』 Submerge(2003)
メジャー・シーンではインナー・シティとして知られるケヴィン・サンダーソンが自身のレーベル=KMSの音源をDJミックス! HDDに取り込んでからPC上でミックスする〈なんちゃってミックス〉が溢れるなか、デトロイト第1世代の御大はあくまでも〈生〉にこだわったミックス。デトロイト・クラシック多数収録!!(ビグフォン)
ALTON MILLER
『Stories In Bohemia』 Peacefrog(2003)
KMSやフラジャイルからクラシックを多数放ち、アフロディジアック名義でも知られるデトロイト・ハウスの重鎮、アルトン・ミラー。前年にKDJからリリースした“Shine On Me”を含むこのセカンド・アルバムにも人肌の温もりを帯びたディープ・ハウスがひしめく。ヴォーカル・トラックの深み、ストリングス使い……すべてが職人的な好仕事だ。(轟)
RECLOOSE
『Cardiology』 Planet E/!K7(2002)
次代を担う才能として98年にデビューしてから随分時間は経ったが、アイロやジョン・アーノルドの名前がフォーカスされるようになったいまだからこそ、このリクルースことマット・チコインの先駆性が見えてくる部分も大きい。カール・クレイグ直系の緻密なジャズ・センスを開花させたこのファースト・アルバムには、そのアイロがコズミック・ヴァイブ全開の鍵盤を差し込んだ“Kapiti Dream”、ジョンのギター・カッティングが洒脱な“M.I.A.”、そしてもちろんドゥウェレをフィーチャーした名曲“Can't Take It”などがひしめき、さながらその後に登場してくるデトロイトの腕利きたちをプレゼンテーションしているかのようでもある。こんなタイミングだからなおのこと、そろそろニュー・アルバムが聴きたいのだが。(出嶌)
MOODYMANN
『Silence In The Secret Garden』 Peacefrog(2003)
痛いほど目を見開いても何も見えない漆黒の闇がムーディーマンの音世界には広がっている。一方でそれは何とも言えないメランコリーと切ないまでの温かみを纏っている……。妖しくロマンティックなジャケが印象的な本作は、現時点での最新作にあたる通算4枚目のアルバム。ノーマ・ジーン・ベルの凛としたサックスをフィーチャーしている“People”(インナーゾーン・オーケストラ“People Make The World Go Round”のリメイク)、哀感漂うピアノが美しい“Shine”などなど、ゴスペル、ソウル、ジャズなどを包括した圧倒的なブラックネスのさらなる深化を堪能できる名曲揃いだ。10分以上の大作として屹立する表題曲から、終曲“Sweet Yesterday”へと至る流れで感動を覚えない人は心に穴が空いている。(佐山)
VARIOUS ARTISTS
『Time : Space_02』 Transmat(2002)
デリック・メイ主宰レーベルのコンピ第2弾。インディオやマイクロワールド、ステファン・ブラウンら非地元勢による〈世界中から生まれたデトロイト〉音源集、という側面もあるが、一方でLS(アイロの別名)によるアグレッシヴなフリージャズ・ファンク“Thyme Spice”、ジョン・アーノルドのラテン“Respectall”なども聴き逃し厳禁。(佐山)
VARIOUS ARTISTS
『Detroit Beatdown』 third-ear(2003)
〈ビートダウン〉を合い言葉にしたハウス~ダウンテンポの2枚組コンピ。流麗な鍵盤がスピリチュアルなマリック・アルストンの“Butterfly”、つんのめり具合が美しいセオ・パリッシュの“Falling Up”、アルトン・ミラーの乾いたコズミック・ジャズ“Tulum”など、美しく溶解していく音世界の広がりはデザイナーズ・リパブリック製のジャケそのまま。(佐山)
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