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特集

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2004年03月11日 18:00

ソース: 『bounce』 251号(2004/2/25)

文/出嶌 孝次

アンプ・フィドラーが世界待望の大作『Waltz For A Ghetto Fly』を完成させた。コズミック・ソウルの過去も現在も未来も、すべてここにあるのだ!!


 数多くの才能が瞬いて、ひとつの大きな夜景を形作っているようなデトロイトの音楽宇宙。そこから生まれくるいくつもの〈コズミック・ソウル〉たちはここ数年勢いを増しているが、この鬼才アンプ・フィドラーこそ、まさに〈コズミック!〉な大傑作『Waltz Of A Ghetto Fly』を作り上げたばかりの御仁。あんた、コズミックだよ!

「その表現、気に入ったね(笑)。〈コズミック〉ということは〈スペース〉があるっていう意味だしね。いろんな音楽に影響されてきたから、俺の音楽的対話は一般的なものと違うと思う。自分が〈コズミック〉なら素晴らしいよ」。


エンチャントメントのベスト盤『The Best Of Enchantment』(Capitol)。アンプ・フィドラーの青春盤はコレだ(想像)

  彼はデトロイト新時代の旗手とも囁かれるシーンのキーマンである。が、彼が80年代から活躍するヴェテランのミュージシャンだってことを忘れてはいけない。何せ、「アルバムに参加してるドリアンは12歳になる息子さ(笑)。学校で音楽とトランペットの勉強をしてるんだ」という父親ぶりまで見せてくれているのだ。まずは、そのキャリアから振り返ってもらうとしよう。

ジョージとの演奏は試練だった(笑)

「俺はもう40代だから、60年代生まれなんだ。生まれも育ちもデトロイトだよ。5人兄弟の末っ子さ」。

 その家族構成は、クラシック好きの母親と、セント・ヴィンセント出身でカリプソやソカを好んだ父親、そしてモータウン好きの長姉、「ヒッピーっぽい」次姉はジャニスにジミにスライを愛で、長兄はビバップ、そして、バブズ・フィドラーとしても有名なひとつ上の兄はファンク……とさまざまな音がひしめくまさに音楽一家。ちなみに現在の住まいはデトロイト中心部のコネット・ガーデンズ(「エミネムの映画は〈8 Mile〉の話だったけど、俺は7マイルという通りに住んでるんだ(笑)」)だという。母親に奨められたピアノ・レッスンから音楽にのめり込んでいったアンプは、ベースを弾いていた兄バブズと共に早くから音楽の道を志していた。

「物心がついた頃から決めてたね(笑)。常にプロのミュージシャンになることを夢見てた。なるたけ早くプロになりたくて、実際に結構早く実現できたよ」。

 その言葉どおり活動を始めて2年ほどで得た初仕事がデトロイトのソウル・グループ、エンチャントメントのツアー・バンドだった。その経験を経て、アンプのキャリアは開けていく。

「彼らとツアーした後に、自分でデモを作ったり作曲してたんだ。なかでもファンクが好きだったから、ファンキーな曲をたくさん作ってた。俺はスタジオを持ってたから、出入りするいろんなミュージシャンとジャムってたんだよ。そのなかにPファンクのマイケル・クリップ・ペイン、アンドレ・フォックス、トレイ・リュード(ジョージ・クリントンの息子)もいたのさ。で、当時の彼女が、俺のデモテープをジョージ・クリントンに渡してくれて、それがきっかけでジョージのスタジオに呼ばれたんだ。何度も呼び戻されてセッションを重ねていくうちに、ツアーにも誘われた。そこからすべてが始まったんだよ」。

 そんな抜擢を受けて、「子供の頃からメンバーになりたかった」というPファンク軍団に加入し、80年代半ば以降、レコーディングからライヴまでアンプ・フィドラーの名前はPファンクに欠かせないものとなっていく。

「ジョージからは、スタジオでプロデュースする方法、完全に感情に入り込んでステージ上で演奏する方法、音楽的にアグレッシヴでいる方法……いろいろ学んだよ。パブリッシング、レコード会社とのやり取り、プロモーション、マーケティングなんかもね。彼から学ぶことは凄く多かったよ」。

 一方で、バブズとのデュオ=Mrフィドラーとして「ファンクと40年代の音楽を融合させたかった」というアルバム『With Respect』も90年にリリースしている。そんな多岐に渡る活躍の結果、アンプのセッションマンとしての名声は90年代半ば頃にはすでに確固たるものとなっていた。セッションの相手はドン・ウォズやドラマティックスといった同郷の先達からプライマル・スクリームやシール、マクスウェルまで幅広いフィールドに及ぶが、アンプは誰と演奏するのも自然体だと語る。

「相手が誰でもあまり緊張しないな。ジョージと演奏した経験があるからね。彼と演奏することが究極の試練だったからさ(笑)。相手と話して彼らの音楽に入り込んで、リラックスして演奏すればいいだけだよ。それに、いっしょに仕事をするアーティストのことを必ずリスペクトするようにしてる。俺がわかったのはどんなアーティストでも自分と同じ人間だってこと。神から才能を授かったという意味でドン・ウォズやシールは特別だったけどね」。

 では、現在のアンプの音楽性に大きな影響を与えているムーディーマンの場合はどうだったのだろう?

「もちろんダンス・ミュージックという側面では彼に影響されたよ。俺は共演相手の音楽を深く聴いて好きになるから、その人の音楽が持っているトーンや音の周波数までもが心に刻まれてしまうんだよね。自分で曲作りをするときにそれが反映されるんだ」。

▼こんなところでもアンプは演奏してます


ウォズ(ノット・ウォズ)『What's Up Dog?』(Fontana)


ダヴィーナ『Best Of Both Worlds』(Loud)

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