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日本は突破者の宝庫だ!! JAPAN AVANT-JAZZ(2)

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2004年02月19日 17:00

更新: 2004年02月19日 18:17

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/土佐 有明

さぁ、こっちにおいで。渋さ知らズはメチャ楽しいぞ!! PARTY TIME

 カーニヴァル、見世物小屋、お化け屋敷、放浪芸、アングラ芝居、前衛舞踏、そして歌謡曲にファンクにフリージャズ……。渋さ知らズとは、そのすべての要素を含む猥雑なステージで、祝祭的な磁場を世界中に出現させてきたバンドである。いや、バンドというのはちょっと正確ではないか。なにせ、メンバーには勝井祐二や片山広明、芳垣安洋のようなプロフェッショナルな音楽家から、白塗りのダンサーや舞踏家、〈エンヤトット!〉とひたすら連呼するだけの劇団員まで、「共通言語をまったく持たない人たち」(不破大輔 : 以下同)が混在しているのだから。しかもその人数は、多いときで50~60人にもおよぶのだ。

 そして、この異形の集団を仕切るのが〈ダンドリスト〉を自称するベーシストの不破大輔。フェダインなどのバンドで活躍した経歴を持ち、劇伴の音楽も手掛けたりしている。ちなみに不破は59年生まれ。阿部薫のステージも、寺山修司の天井桟敷も唐十郎の状況劇場も、70年代に生で目撃しているという。つまり、ライヴにせよ演劇にせよ、予期せぬハプニングがいつ起きてもおかしくない当時の不穏な空気を肌で知っている人だ。

「あの頃は、演奏会場でしょっちゅう殴り合いのケンカがありましたよね。今思うと、そのケンカ自体もひょっとしたら仕込みというか、演出だったのかもしれないですけど。僕は当時、自由ヶ丘の〈アルフィー〉というジャズ喫茶でアルバイトをしていたんですけど、お客さんを追い出すためにミルフォード・グレイヴスをかけるみたいなところでね(笑)。常連の酒飲みが来ると、コルトレーンか山下洋輔トリオのいちばん激しいやつなんかかけて盛り上がってました」。

 では、渋さのステージに当時の刷り込みはなんらかの形で作用しているのだろうか?

「昔〈おーむ〉っていうジャズ喫茶が小岩にあって、サブさん(豊住芳三郎)とか梅津和時さんとかペーター・ブロッツマンとかジョン・ゾーンなんかが出ていたんですけど、そこのお客さんが本当に酔っ払うとひどくてね。一升瓶持って〈コラー、聞こえねえぞ!〉ってヤジってくる。僕なんかは、もうこいつらに負けるもんかって気分で演奏してましたよ。で、渋さも、ああいう傲慢なお客さんの心理になってやってるのかもしれないですね。聴きたいところまで聴かせろよ、みたいな。だって、(渋さでは)本当はメロディーを4回繰り返せば済むところを12回やったりしているわけだから(笑)。しかも大人数で、ユニゾンでね。要するに、カタルシスを得られるところまでとことんやりたいのかもしれないですね、なんでも」。

 そう、要するにやることがエクストリーム(極端)なのだ、渋さ知らズは。バランス良く、ほどほどに、なんて考えはハナからなく、ここまでやったらおもしろいだろう(あるいは、ここまでやらなきゃおもしろくない)というほどになんでも徹底してやってみる。人数は多ければ多いほどいい。仕掛けはたくさんあればあるほどいい。そのほうが爆発が起きた時のカタルシスは大きくなるのだから、と。

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