フリージャズとロックのE関係
フリージャズとロック、底なしの胃袋を持った者同士だけに、お互い食って食われての深くて濃い(恋)関係が続いている。たとえばサン・ラーは、彼のフリーキーなコレクターであるサーストン・ムーアから、カヴァー曲を捧げたNRBQまでシンパ多数。なかでもソニック・ユースで聴かせるねっとりしたインプロヴィゼーションは、ジャーマンから土星に至るソニック・ドライヴといったところか。そのサーストンと何度かセッションしているのがデレク・ベイリーで、ジム・オルークもリスペクトするこの天才ギタリストは、最近ではなんとデヴィッド・シルヴィアンとの共演で〈歌って狂う〉ギターの冴えを見せている。でも共演といえば忘れられないのがブリジット・フォンテーヌとアート・アンサンブル・オブ・シカゴによる〈ラジオのように〉。その呪術的な唄とグルーヴの共演はまさに〈狂宴〉と書くべき凄まじさだ。
一方、NYロフト・ジャズとパンクの仲人となったジョン・ゾーンが主宰するツァデイックからは、マーク・リーボーやメルツバウなど数多くの〈越境者〉をリリースしているが、なかでも吉田達也率いるルインズはフリージャズ・マグマを秘めた変拍子活火山!! そして、その吉田の大きなルーツでもあるUKのレーベル、レコメンデッドの看板アーティストがヘンリー・カウ。彼らこそは恐るべき音楽的強度と自由度を持った希有の越境集団であり、だからこそ、メンバーだったフレッド・フリスのドキュメンタリー映画には「Step Across The Border」というタイトルが授けられたのだ。以上、ロックとフリー・ジャズのキャラヴァンは自由にボーダーをアクロスし合ってる、っていうお話。
▼文中に登場したアーティストの作品を紹介
ヘンリー・カウの74年作『Unrest』(East Side Degital)