HOW THE WEST WAS WON(2)
聴いて何かを得られるアルバムさ
こうした発言を聞くと、今回の『Terrorist Threats』はさぞかし西海岸の存在とそのパワーを強く訴える内容なのかと思いがちだが、話はそんなに単純ではない。
「“Pimp The System”では……ピンプっていえば売春婦からカネを搾取するってのが普通だろ? 女をピンプするんじゃなくて、CEO(会社の最高責任者)をピンプしろよ、ってことさ。世界を牛耳って金を持ってる連中から巻き上げなきゃダメさ、ってこと。それとはまたコンセプトが違う“Terrorist Threats”は、ちょっと脅しさえすれば、人をコントロールするだけのすげえパワーを手に入れることができるって曲さ。“Superstar”は、誰かを殺したりムショ入りしなきゃプラチナム・レコードを手に入れられないと思ってるラッパー連中へのメッセージ・ソングでもある。“So Many Rappers In Love”は、シンガーをフィーチャーしてラヴ・ソングばかり出してるようなラッパーに対する曲だ。“You Gotta Have Heart”はゲットーで生きる人々、そしてラップ・ゲームに生きる奴らへのトリビュート曲。それと“Potential Victims”は、すべての人たちが政府の犠牲になってるっていうことを話してる。ただパーティーするだけのレコードじゃなく、聴いて何かに気付いたり、何かしらを得ることができるようなアルバムが出来たんじゃないかな。ストリート・レヴェルからの声ってことさ」(キューブ)。
西海岸のプライドを掲げながらも、巨大化とともにマネー/ビジネス戦争へと変貌していく業界全体、そしてそのような状況に伴って台頭するオリジナリティーの欠落したアーティスト、さらにはアメリカ政府へと彼らの怒りの矛先は向けられている。つまりウェストサイド・コネクションは、ヒップホップの本質的な部分に憂い、怒り、警鐘を鳴らしているのだ。アイス・キューブがNWA~ソロとキャリアを通じて社会的なメッセージを発してきたことを忘れてはならない。〈西海岸産〉という印のついた地域限定の音楽ではなく、ウェストサイド・コネクションのメッセージは、すべてのヒップホップ・ファンが耳を傾けるべきものなのだ。彼らは決して聴き手を選んではいないのだから。
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