CROSSOVER
毎度のことながら何をもってクロスオーヴァーと呼ぶかがポイントだが……過去の作品がいかに雑多な要素を含むかの足し算だとしたら、2003年際立ったのはシンプルに聴かせ方を絞り込んできた引き算系作品のようにも思える。そんななか、結果的に目立ったのはR&B的要素の増大とブラジル色の後退。クリエイターたちの成熟も相まって、より生音を重視したジャズ・テイストの煌めきも重要だった。また、ディープ・ハウス方面にまで跨がって重要だったのは〈北欧〉。その中心人物であるアンドレアス・サーグを中心に、2004年もこのシーンを活気づけることは間違いない。(轟)
THE DETROIT EXPERIMENT 『The Detroit Experiment』 Ropeadope
カール・クレイグを中心にデトロイトの才能が集まった大掛かりなプロジェクト。インナーゾーンを通過した雰囲気に偉人ジャズメンからアンプ・フィドラー、カリーム・リギンズらが勢揃いし、劇的ではないのに物語性を感じさせる作りが素晴らしい。(高橋)
SPACEK 『Vintage Hi-Tech』 !K7
SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINEのリミックスも印象的だったスペイセックの、!K7に移籍しての2作目。フィルター・ソウルとでも呼んでおきたい独特の霞がかったエレクトロニクスはいっそう歌心を帯び、チルアウト的な気持ち良さも強調。またしても傑作に。(高橋)
STATELESS 『Art Of No State』 Freerange
2003年のクロスオーヴァー界隈で頻出したキーワードは断然〈北欧〉だった。その真打ちこそ、ステイトレスことアンドレアス・サーグ。ユキミ・ナガノ、アーネストら本作に参加したヴォーカル陣も2003年の顔(声)だった。2004年も聴き返すに違いない一枚。(轟)
TRUBY TRIO 『Elevator Music』 Compost
ドイツ・クラブ・ジャズ界のフィクサー的存在が長いキャリアの果てにようやくリリースしたファースト・アルバム。前年のジャザノヴァに匹敵する待望盤にして、ソウル/R&Bな行き方を選んだ作品の高品質ぶりもジャザノヴァ同様だった。(高橋)
REEL PEOPLE 『Second Guess』 Papa
レストレス・ソウル人脈などによる職人集団がついに重い腰を上げ、ハウスもジャズも包括したグルーヴィーなソウル・アルバムを完成させた。ネイサン・ヘインズやアンジェラ・ジョンソン、ヴァネッサ・フリーマンらが振りまくスパイスも効いてる。(轟)
DJ Mitsu the Beats 『NEW AWAKENING』 PLANETGROOVE
2003年には外部仕事も急増したGAGLEの頭脳による初ソロ。タイトなヒップホップ・ビーツで聴かせる前半も当然いいが、ハウス~ブロークン・ビーツへと飛翔していくソウルフルな後半の見事さは、彼の視野そのもの。ドゥウェレらゲスト選びも的確。(轟)
GEORG LEVIN 『Can't Hold Back』 Sonar Kollektiv
新体制でスタートしたソナー・コレクティヴから登場したアーバンなシンガー。AORライクで懐古趣味スレスレの内容ではあるが、絶妙のサウンド・センスも相まってこのブルーアイドな歌心にはまったく抵抗不能。タイムレスな傑作になりそう。(高橋)
TWO BANKS OF FOUR 『Three Street Worlds』 Red Egyptian
ガリアーノを持ち出すのももはや失礼な屈指の2作目。スピリチュアル・ジャズにグッと焦点を定め、カルロス・ガーネットのカヴァーも披露。ベンベ・セグエやヴァレリー・エティエンヌの歌も含め、意匠的な部分以外でも深みを増した粋な大作。(高橋)
MEITZ 『Vertikal』 Infracom!
コンポスト~ソナー周辺で名を成していた名裏方=フォルカー・マイツ初のアルバムは、2003年に興味深い動きを見せたインフラコムの隠し玉にして王道のドイツ産フューチャー・ジャズ! さまざまな要素を一本に繋ぐジャジーなプロダクションの精緻さは同種の作品中でも群を抜く。(轟)
PHUTURISTIX 『Feel It Out』 Hospital
ジュースマンと共にミックスCDもリリースするなど2003年も大活躍だったゼッド・バイアス。このフューチャリスティックスはマッドスリンキーに続くジャズ寄りプロジェクト。サウンドの構成はブロークン・ビーツ的でありつつ、太いボトムと旋律を重視した機能的で高度な一枚に。(高橋)
JOHN ARNOLD 『Neighbourhood Science』 Ubiquity
勝手に〈新世代〉と呼びたくなるデトロイト産の才人。ブレイクビーツを基盤に、デトロイトらしさやユビキティらしさなど種々の要素が絡み合い、結果として彼らしさへと繋がっている。アンプ・フィドラーやアイロら同郷人の登場も世代交代感アリ。(轟)
DA LATA 『Serious』 Palm Pictures
重鎮パトリック・フォージが率いるダ・ラータ、待望の2作目。ブラジルへとまっすぐに注いでいた眼差しをフッと他所へ向けてみたかのような、アフロビートにまで到達したサウンド志向の拡がりが印象的。クロスオーヴァーらしいクロスオーヴァーの代表格。(高橋)
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