「私は自分の立ち位置がわかっているし、なにがいちばん得意かもわかっているし……」
おかえり、カイリー!!──と言っても、全世界にカイリー・フィーヴァーを巻き起こした2001年発表の前作『Fever』ですでに完全復活を遂げているのは周知の事実だから、いまさら〈おかえり〉はないんじゃないの?と、ほとんどの人は思うだろう。でも、それでも、やっぱり彼女は帰ってきたのだ。まずはとにかく、本作『Body Language』のオープニング・ナンバーにして先行シングルでもある“Slow”を聴いてほしい。
「初めてこの曲のデモを聴いたとき、〈うわっ、最高じゃない、これ!〉って思ったのよ。シンプルでありながら凄くパワフル。そして確かに、ちょっぴりレトロなサウンド」。
タイトルどおりのキラめくようなスロウ・グルーヴ。穏やかに弾む高揚感。そしてそのサウンド・テクスチャーはあきらかに80's的なディスコティーク! けれど、当然ただの懐古的ナンバーには仕上がっていない。
「レトロではあるけれど、でもここには完全に現代的な新しさがあるわ」。
彼女のこの発言は、アルバム中の他の曲についても同様に当てはまる。80's的サウンドにR&Bやブレイクビーツを巧みにミックスした〈最新型ダンス・サウンド〉。それが本作の最重要キーワードであり、つまりは新進気鋭のベイビー・アッシュから大御所カーティス・マントロニックまでをも迎えた超敏腕プロデュース・チームの最大の狙いである。元祖ニューウェイヴ・バンド、スクリッティ・ポリッティのグリーン・ガーサイドが参加した“Someday”に対してのカイリーのコメントも印象的だ。
「彼の声が入ってくるたびに、毎回クラクラしちゃうの。だってスクリッティ・ポリッティは、私たちがこのアルバムを作るのに参考にしたサウンドのひとつなんだから」と、彼女(とプロデュース陣)は80'sサウンドへの素直な憧憬と今作での確信犯ぶりを隠さない。
「『Light Years』と『Fever』で土台が出来上がっていたから、今回の作品はいままで作った中でもいちばん楽だった。宿題はもう済ませてあるって状態ね」。
彼女が言うように、前2作の成功が本作での冒険をさらにやりやすくしたのは事実だろう。けれどカイリーのバックボーンともいうべき80's的な装飾に彩られた作品だからこそ、気負いなくリラックスした気持ちで臨めたのも確かなはずだ。
「私は自分の立ち位置がわかっているし、なにがいちばん得意かもわかっているし、どうやってそれを形にするかもわかっているの」。
最新のスタイルにルーツ的サウンドを融合させることによって、シッカリと確実に時代を一巡させた彼女には、やはりこの言葉こそがふさわしい。おかえり、カイリー!
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