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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年11月20日 13:00

更新: 2003年11月20日 17:33

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/武田 大樹

創生期よりシーンを支えてきたヴェテランが新作を発表する!! 新たなサウンド・プロダクションを施した、彼らのメッセージはもはや最強だ!!


 いわゆるエモ・パンクの創生期をゲット・アップ・キッズ、プロミス・リングらと共に担った重要バンドのブレイド。そのブレイドが母体となり結成されたヘイ・メルセデスがアルバム『Loses Control』をリリースする! 通算2作目となる本作からは、その作風に多少の変化が見て取れる。

「ハード・ロックっぽいものをめざしていたのは確かだね。メンバー全員がパワフルなサウンドを欲していた。だからプロデューサーを決めるときも、ハード・ロック・テイストのあるプロデューサーが欲しくて。さらにメンバー全員がサウンド面を委ねられるように、信頼できる人間を探してたんだ。今回起用したプロデューサーは、ギター・サウンドにピン・ポイントを当ててくれたからスケールの大きい音になった。もともとそんな〈大きなサウンド〉を欲していたから、大満足だよ!」(デイモン・アトキンソン、ドラムス:以下同)。

 そのプロデューサーとは、レディオヘッドやホールなど、大御所バンドをいくつも手掛けてきたショーン・スレイド、ポール・コールドリーの2人によるもの。前作『Everynight Fire Works』までは、これまでエモ・パンクと呼ばれる作品の数多くを手掛けてきたJ・ロビンスによるもの。双方ともに著名ではあるが、そのスタイルはやはり違う。

「確かに違うスタイルの持ち主だね。今回は何か新しいことに挑戦したかったから、いままで作業をしたことのない人とやろうと思ったんだ。当然違いもあるけど、それぞれに優れたプロデューサーなのは間違いない。ショーンとポールが手掛けたレコードの中には、僕たちが大好きな、名盤と呼ばれてもおかしくないようなレコードがあったりしてね。そんな人たちだから、きっと僕らのことも理解してくれるんじゃないか?と思ったのさ」。

 こうして完成した『Loses Control』は、そんな2人の力がフルに反映された素晴らしい出来映えになった。結果としてそれはバンドの印象をも変化させたわけだが、彼らはごくごく自然な流れとして捉えている。

「スタイルの変化はまったく考えてないし、考えたこともなかった。僕たちはいろんなことに刺激され影響を受けてきているから、自然な発展だと思う。一つのステップアップだと考えてるよ。明確なヴィジョンを持って、理想に近い形になるまでじっくり練り上げた。メンバー自身、満足いくアルバムに仕上がったわけだから、どうしても興奮しちゃうよね。その興奮も内容に反映されてると思う」。

 ブレイド、そしてヘイ・メルセデスとしても来日経験のある彼ら、日本に対しては何か特別な感情があるのだろうか?

「もうマジで日本に惚れ込んでいるんだ! もっとたくさん訪れたいね。とにかく美しくて、人間が素晴らしい国だと思う。いままで10年間もアメリカをグルグル回ってきて、アメリカの隅々まで見ちゃったから、日本に行くと何もかもが新鮮でね。僕たちは基本的に〈音楽大好き人間〉だから音楽をプレイしてる。決して有名になりたいからやってるわけじゃないんだ。でも、日本であそこまで良くしてもらえると、ちょっと嬉しかったりもするんだ(笑)」。

 こんなコメントからも、彼らの楽曲と同じくらい人柄がストレートに伝わってくる。ふたたび彼らが訪れる日は近い……かどうかは定かでないが、ピュアな部分を決して忘れない、そんなスタンスがヘイ・メルセデスの人気の理由なのである。

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