ビートルズが生んだピープルツリー その5
BOB DYLAN & THE BAND
『The Basement Tapes』
Sony(1975)
66年7月以降の休養期間、ホークス(ザ・バンド)とともに、日々重ねたセッションのごく一部がこのアルバム。彼らは楽しみながらも、アメリカン・ルーツ・ミュージックの再構築を試みた。この録音の私家版レコードが、ビートルズにも影響を与えたという。(鈴木)
BLUR
『Blur』
Virgin(1997)
切れのいいビートはフー。モッズ・ムーヴィーの俳優と掛け合いをやる曲は演劇調だった中期キンクス風。でも、“Michelle”を意識してかフランス人のレティシア・サディエールと共演も。1曲ごとにドラマがあるあたりはやはり〈ホワイト・アルバム〉か。(岡村)
YMO
『テクノデリック』
東芝EMI(1981)
ビートルズ同様、バンドとして有機的な結合を見い出せなくなった末期、各メンバーがそれぞれにリーダーシップをとって、分業制で作り上げたアルバムだが、奇妙なことに静かな統一感がある。“TAISO”の変態よい子感覚も今は昔……。(杉山)
はっぴいえんど
『風街ろまん』
東芝EMI(1971)
メンバー各々の力量とモチベーションが同等の高みを極めて生まれた最高傑作。ビートルズで例えるところの『Abbey Road』。こんなスゴいのを作っちゃったから、みんなもう満足!と言ったか言わぬか、次のときはみなさん〈心ここにあらず〉でした。(久保田)
PRIMAL SCREAM
『Vanishing Point』
Creation(1997)
変化し、裏切り続けながら可能性を拓く。それがロック・スターとしての条件なら、ビートルズもプライマル・スクリームもまさにスター。全方位で音楽を吸収し、あらゆるスタイルを身に纏いながらも、そこにあるのはロックというプライマルな叫び。(村尾)
サザンオールスターズ
『kamakura』
TAISHITA(1985)
打ち込みを大胆に導入した上にアフリカン・ポップスまで飛び出す80年代中期の力作。やりたいこと全部を詰め込んだ上で“Melody”や“Bye Bye My Love”など、ヒットのツボもしっかり押さえている。このあたりの身のこなしは後期ビートルズに通じる。(杉山)
KINKS
『Muswell Hillbillies』
BMG(1971)
リンゴのカントリー指向、ジョンのブルーズ好きが音として表面化した時、ビートルズのベクトルは分散する。アメリカの音楽に対する臆面もない告白。キンクスも60年代を駆け抜けイギリスからアメリカを見る。それは混迷の果てに見出した自己の確立。(米田)
KULA SHAKER
『Kula Shaker』
Columbia(1999)
〈21世紀の精神異常者〉とは彼らのことだったのか? ビートルズに影響を受けたロバート・フリップがキング・クリムゾンを結成したという流れを音源化したような本作。プロデューサーにピンク・フロイドを手掛けたボブ・エズリンを迎える周到さ。(小野田)
奥田民生
『GOLDBLEND』
SME(2000)
ビートルズはもちろん、70年代ロックの雑多なネタをわかりやすいものからマニアックなものまで散りばめた、彼だからこそできる傑作。適当なようでその実、本質を突かんとする芯の太いサウンドに加え、メロディーメーカーとしての多才さにも注目したい。(杉山)