1968-1969 〈個〉を尊重することで得たヴァラエティー豊かな音楽性
ビートルズがすべての音楽の入り口になりうる存在だ、などといわれる所以は一体どこにあるのだろうか。試しに『The Beatles』(通称ホワイト・アルバム、68年)を聴いてみてほしい。とどまるところを知らない貪欲なまでの実験精神によってサウンドの幅を広げていった4人が、『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』(と、『Magical Mystery Tour』を頂点に、それぞれの持ち味を〈個〉として作品に消化したもの、それがこの『The Beatles』だった。グループとしてのまとまりに欠ける曲や、ひとりで演奏した曲も多く含まれているが、だからこそ、フォーク、カントリー、ヘヴィーメタル、ブルース、ジャズ、クラシック、レゲエ、現代音楽……などさまざまなタイプの音楽が盛り込まれた内容となっていて、ビートルズの音楽性の豊かさを堪能できる。
そうした多種多様な音楽性を持ち得ていた彼らの、文字通り集大成となったのが、実質的なラスト・アルバム『Abbey Road』(69年)だ。前半に4人の個性の際立つ曲を収め、後半は未完成の曲をポールのアイデアでメドレーとしてつなぎ、流暢にまとめ上げた。“Here Comes The Sun”“Because”ではムーグ・シンセサイザーをいち早く導入するという、解散間際にしてなお、ともいえるさすがの技をみせている。“The End”で有終の美を飾り、女王への別れの挨拶をビートルズ流にさりげなく披露するという劇的な幕切れも見事だった。
▼メンバーそれぞれの個性が際立つ後期の作品を紹介。
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