TALK SESSION(2)
多岐にわたる音楽的志向 その1
村尾「たとえば過去のシンガー・ソングライターを引き合いに出すとして、ボブ・ディランorジェイムス・テイラーかといったら、いまのシンガーはジェイムス・テイラー派ですね」
新谷「(笑)そうですね。なにかを主張するよりも曲をクラフトする感じ。社会派ってあまりいないですね。ブライト・アイズのコナー・オバーストがやってるデスパラシドスっていうロック・ユニットはちょっとそんな感じかな。あとジャック・ジョンソンが新作で〈ポスト9.11〉的な歌を歌ってたくらい」
村尾「ブライト・アイズといえば、メジャーで活躍していてもおかしくないくらいの音楽性とキャラクターを備えたアーティストだと思うんですが、インディーとメジャーとの境界っていまどうなっているのでしょうね。 ダッシュボードは突然浮上してきたような感じもあるんですが」
新谷「MTVに〈M2〉っていうオルタナ色の強いチャンネルが出来て、その〈M2〉賞を去年受賞したのがキッカケなんですけど、知らない間に浮上したって感じですね。最近のパンク・ムーヴメントとオーヴァーラップしているところもあるんじゃないでしょうか」
村尾「たとえばボビー“プリンス”ビリーやスモッグみたいにテコでもインディーから動かないアーティストがいて、彼らのように生粋のインディー・アーティストとジョン・メイヤーみたいなメインストリームの間にダッシュボードがいると」
新谷「いまはそんなにインディーにこだわってる若いアーティストはいないんじゃないですかね。アダム・グリーン(モルディー・ピーチズ)とかもソロをメジャーからリリースするみたいだし。ブライト・アイズみたいにすぐにメジャーに出て来れるような状況にあっても、レーベルや活動しやすい地元にこだわってインディーから動かないパターンもあるでしょうしね」
村尾「いわゆるポップ・パンク・バンドとシンガー・ソングライターものと、ほぼ時期を同じくしてムーヴメントが盛り上がってますが、聴かれ方の違いってどんなところだと思われますか?」
新谷「ポップ・パンクは、ずっとティーンでいたいような青臭さがありますね。〈アンチ大人〉〈アンチ金持ち〉みたいな(笑)。シンガー・ソングライターたちには何かに対する反抗みたいなものはない。20代以降の年齢層にも響く内容を歌ってます」
▼文中に登場するアーティストの作品を一部紹介。
スモッグの2000年作『Dongs Of Sevotion』(Drag City)
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