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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年08月21日 15:00

更新: 2003年12月25日 19:28

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/Masso 187um

ブタを喰らう2000年代のブルースメン


 ジョージア州はアルバニーというあまり聞き覚えのない土地から登場した2人組、フィールド・モブ。昨年末に輸入盤がリリースされ傑作の呼び声も高かったセカンド・アルバム『From Tha Roota To Tha Toota』。これまでにないファニーなキャラでも注目を集めている2人だが、まずはベーシックな部分、ラップを始めた頃の話をしてもらおう。

「ハイスクール時代にお互いラップのフリースタイルとかやってて最初はライヴァルだったけど、〈よお、ビギーと2パックみたいにオレらはお互いドープなMCなんだから、ビーフなんかしてるより2人で強力なグループを作ろうぜ〉って意気投合したのがキッカケなんだ」(スモーク)。

〈ネクスト・アウトキャスト〉なんていうありがたい(?)形容で語られることが多い彼らだが、そのアウトキャストら先人たちからの影響を隠すこともない。

「そりゃジョージア、南部の出だから当然影響は受けてるよ。ダンジョン・ファミリー自体からの影響もあるけど、デュオという点ではやっぱアウトキャストだなー」(スモーク)。

 前作『613: Ashy To Classy』以上に今作はソウルフルなサウンドに近づき、そのへんからもアウトキャストに近い雰囲気がする。実際、彼ら自身も今作でより成長したことを実感しているようだ。

「オレは1枚目も好きなんだけど、2枚目のほうが最初のより良いってのは当然だろ。最初はオレたち、めちゃくちゃ貧乏だったよ。まわりはブリンブリンで金のことばっかなのにさ。でもオレたちは、南部のすげぇ貧乏な生活をラップしてそれがウケた。そして今作では人間的にも音楽的にも成長して、リリックだっていろんなことを取り上げてるし、内容的にももっと大人になったね」(スモーク)。

 やたら貧乏をレプリゼントしてる気もするユニークな彼らだが、確かに描くリリックも非常にユニーク。それはいったい何からインスパイアされているのだろう?

「俺たちの環境さ。ひでぇ貧乏なんだけど、そのなかでオモシロいことを見つけて遊んでるんだ。アルバニーはアトランタから車で2時間くらいのすげぇ田舎なんだぜ。みんな仕事もなくて、食うものにも事欠いてるくらいなんだ。アルバム・タイトルの『From Tha Roota To Tha Toota』どおりにブタの頭から足の先まで全部食っちゃうのさ。オレたちは貧乏だけどそれなりにハッピーだし、そういうことをラップしてるんだよ」(スモーク)。

 彼が例に挙げ、ジャケットにも描かれているのが、いまや彼らの代名詞ともなったブタだ。大ヒットした“Sick Of Being Lonely”では女の子を家に放ったらかして、ブタを連れてクラブへ繰り出してるし! とにかく彼らからは、流行のサグなイメージなんかとは遠く離れたオリジナルなスタイルを感じさせるのだ。

「スタイル? そんなもんねぇよ。オレたちはオレたちの好きなようにやってるだけさ。トゥー・ショートは〈ピンプ〉、アイス・キューブは〈ギャングスタ〉、だけどオレたちはサグでもギャングスタでもない、アルバニーのフィールド・モブさ! オレたちはドープな曲もやるし女向けの曲もいろいろやってる。カントリー・ニガーだけど誇りに思ってるぜ」(スモーク)。

「そうさ、オレらはフィールド・ボーイ、マイティーでグレイテストなグループさ」(ショーンJ)。

 なるほどなるほど。そんな等身大の姿勢を崩さないところが、虚飾の多いヒップホップ・シーンでは新鮮だったのかも。では南部のシーンがここまで注目を集め続けている理由を当事者である彼らからも語ってもらおう。

「みんなルーツを大切にし、ちゃんと歴史や伝統を守り続けているからさ。南部の人間にはソウルがあるんだ。どんなスタイルをやってもそういうソウルは決して失わない、それが南部なのさ」(スモーク)。

「オレたちは田舎者だけど、ちっとも恥ずかしいとは思ってないぜ。貧しすぎて失うものがないから強気なんだ。ダメモトだからよ」(ショーンJ)。

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