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特集

……そして21世紀のスティーヴ・ウィンウッドが語る新作『About Time』のすべて

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2003年08月07日 18:00

更新: 2003年08月07日 20:07

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/蒔田 亜土

WINWOOD TALKING ABOUT NEW ALBUM, NEW SOUND!

 40年のキャリアを誇るスティーヴ・ウィンウッドの21世紀初のオリジナル・アルバム『About Time』は、原点回帰を図りながらも新しいステージへの扉を開いた作品だ。キーボーディスト兼ヴォーカリストであり才能豊かな作曲者でもある彼は、この新作で現在のロックの〈システム〉に対して強烈なアンチテーゼを投げかけつつも質の高い作品を創り上げたのだ。出発点はハモンドB3オルガンでベース・パートも補っていくという、彼のオリジナリティーにあった。

「2、3年前から、トラフィック時代にやっていたオルガン・ペダルでベースをプレイすることにふたたび興味を持ちはじめた。ハモンドB3だとハーモニーの幅が広がり、ベーシストがいなくてもおもしろい音が創れるんだ」。

 過去さまざまなバンドを渡り歩いてきたウィンウッドだが、トラフィックで創り上げたサウンドの魅力と可能性は、もっと発展させることができると考えていたようだ。そして6年ぶりとなる今作で、そのスタイルをモダンな形で甦らせたのだ。

「サウンドのテーマはワールド・ミュージックとロックンロールのハイブリッドにある。ずっと考えてきたアイデアだったし、今回はそれが実現できた」。

 アルバムの制作にあたり、ウィンウッドがめざしていたポイントはここにある。彼の原点はデルタ・ブルースやトラッド・ フォーク、リズム&ブルースなどにあるが、さまざまなミュージシャンとのセッションによって、あらゆるジャンルの音楽を吸収していった。そして今作では、ジャズやブラジリアン・ミュージックに精通している旧知のホセ・ネトー(ギター)とウォルフレード・レイエズJr(ドラムス)を呼びよせ、その音楽性を昇華させていった。このトリオが核となり構築していったサウンドは、ロックのビートにアフロやカリビアンなどの要素がブレンドされたものになった。

「2人のルーツは英国産のロックンロールにあるが、ホセはブラジル出身だし、ウォルフレードはキューバの血をひいている。だからこうなることは自然の流れだった。さらにコンガなどのパーカッションもうまく取り入れているから、ロック・サウンドにアフロやラテンの要素を加えることができたんだ」。

 この作品にはアーバンなファンク・ビートにディープなソウル、シンプルで美しいバラードにブラインド・フェイスを彷彿とさせる大作ナンバーなどが収められていて、まさに大衆性と革新性の両面を併せ持っているのだ。さらにこのレコーディングは、ほぼ全てが一発録りのスタジオ・ライヴという形でレコーディングされた。

「伝統的な方法をとることで曲に新しい生命が吹き込まれたし、何よりも演奏することを楽しめたよ」。

 サックスやフルート、コンガなどではゲスト・ミュージシャンを起用しているが、基本的にはこのトリオが同じスタジオの空間でセッションしているものを録音している。そのため名プレイヤーによる素晴らしいコラボレーションのなかに、インプロヴィゼーションの緊張感があり、これこそがロックの原点であることを感じさせてくれる。

 このアルバムは、「周りに左右されない環境が欲しかった」という彼が設立したレーベル、ウィンクラフトからの第1弾だ。ワールド・ツアーをスタートさせ、〈フジロック〉への参加も決定しているウィンウッド。『About Time』は、彼のマイルストーンであり、今後のロックの指針を示したアルバムなのだ。

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