90年代初頭に動きはじめたMONDO GROSSOと〈THE ROOM〉の濃密な10年間
LETS MAKE LOVE IN "THE ROOM" TONIGHT!!
奇妙な10年だったと言えるだろう。僕は世代論は信じないし、ある特定の世代にカテゴライズされるのはうんざりだ(僕はいつもひとりだった)。しかし、正確な遠近法を使用した時、僕が属する世代が世界中でクラブ・カルチャーをひとつの大きなカルチャーとして成立させたというのは異論がないだろう。むろん、歴史は繰り返す(最初は悲劇として?)から、前例がなかったわけではない。ピンク・フロイドが〈UFOクラブ〉でスライド・ショウをやってのけた、アレン・ギンズバーグが言ったような〈Let's Make Love In London Tonight〉のあの夏、もしくはアンディ・ウォーホルとイーディの季節……しかし、これほどポップ・カルチャーとしてDJと彼らが作り出したクラブ・カルチャーが深く、広く、世界中の都市に広まったのは、80年半ばから、90年代初めを起点としてなのだ。
MONDO GROSSOの噂は、彼らが東京に来る前から聞いていたし、当時だらしがないDJだった僕が京都にプレイしに行くと、ライヴ・バンドとして出てくるのはMONDO GROSSOだった。僕たちは少数だったが、ジャズやファンクを好きだというだけで、仲間だった。僕たちは金のためにプレイしていたのではなかった。情熱がそうさせたのだ。なんと懐かしいことだろう! そのうち、京都の沖野(修也)氏が東京にやってきた。彼はひどく努力をして、〈THE ROOM〉というクラブをまだスラム化する前の渋谷に作り上げた。〈THE ROOM〉はジャズ・クラブだったが、よりスポンテニアスで、幅広い音楽をプレイすることができるクラブだった。そして、それこそがあの当時アシッド・ジャズと呼ばれた音楽シーンの唯一の可能性だったと僕は考えている。それにMONDO GROSSOも〈THE ROOM〉も、僕たちの世代はいつだって世界同時進行だった。数は少なかった。しかし、ロンドンやパリの動きを真似していたのではない。僕たちは国境を越えて同時に学んでいたのだ。過去を、未来に繋げるために。その頃、ジャズ・ファンク・バンドだったMONDO GROSSOは、今では大沢氏による王道のポップを作るユニットとなった。〈THE ROOM〉は10周年を迎えた。けど、まだまだこれから! 違うかい?
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