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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年07月10日 16:00

更新: 2003年07月10日 16:02

ソース: 『bounce』 244号(2003/6/25)

文/桑原 シロー

コーラル=自転車感覚?

 彼らの美徳は、燃えさかる時代に生まれたもののなかに息づく、生々しい〈躍動〉を汲み取るセンスにあり。レトロ趣味とルーツ探訪の違いについてはっきりとした見解を持っているのだ。上の世代が教えてくれることに忠実であろうとする姿勢と、しかし俺らは独学でいろいろとマスターしてきたぜ!という自負が絡み合ってみえるのだが。

「なんて質問なんだ! どう答えろっつーの? 上の世代が教えてくれたこと……地図の読み方、海の潜り方……」(ジェイムズ)。

「声に出して語れることは、まずないな。たとえば、ジイちゃんの言動を見てて、自分が興味を持ったときだけ反応して、その影響を自然に吸収してる、みたいな感じ」(ビル)。

「もし自分が昔の音楽よりも、コンテンポラリーな音楽のほうにインスピレーションを感じるようだったら、僕の音楽も違うものになっていたのかもね。でも、こういうのって意識的なものじゃないからさ。ついこのあいだも、自分が半年前に書いた曲を聴いてて、当時どういう気持ちでその曲を書いたのか、すっかり忘れてしまっていることに気づいた。そういうのと同じことだと思う。自分が無意識に吸収してきたものを客観的に分析するのは無理なことなんだよ」(ジェイムズ)。

 なるほど。さて、君たちが70年代に生まれていたら、どんな音楽をプレイしていたのだろうか? 想像してみてちょうだい。

「グレゴリアン哀歌!」(ジェイムズ)。

「ズールー・ラップ!」(リー)。

「そうそう! ユーリズミックスとブードゥー・ラッパーの組み合わせみたいな。デイヴ・スチュアートがアコースティック・ギターを弾いてて……」(ビル)。

「ちょっとレイドバックした感じのな。うしろのほうに目出し帽を被ったブードゥー・ラッパーがいて……で、デイヴ・スチュアート!」(ジェイムズ)。

「これ、いままで受けてきたインタヴューのなかでもダントツに妙な質問だな。〈バンドのなかで最悪なメンバーは誰?〉って訊かれたこともあったけど」(ビル)。

「僕は、あの質問好きだぜ。いつも、ポール(・ダフィー、ベース)って答えることにしてるから(笑)」(ジェイムズ)。

「〈メンバーを動物に例えると何ですか?〉ってのもあったな」(リー)。

 ここで俺の例えをひとつ。コーラルの音楽って、自転車的目線を感じさせてならないのだけれども。街角や家の前で起きる小さな出来事に目を凝らしながらゆっくり進んでいるような速度感がある。北野武の映画「キッズ・リターン」のマサルとシンジが運動場をヘンな漕ぎ方しながらフラフラ走るシーンがあったけど、あれと近いものを君らの音楽活動に見ちゃうのだ。

「また小難しいことを言うねぇ」(ビル)。

「でもアルバムの最後の曲“Confessions”を聴いてみてよ。車に乗ってトバしてるように感じると思うから。アルバム全体のこと? だったら……最近、僕たち疲れ気味だからさ。それで、ゆっくりしてるって感じるのかな。同じようなことをさっきも質問されたよね? 〈疲れてる〉って。実はさっきから、同じ質問を形を変えて繰り返し訊かれているような気がする(笑)」(ジェイムズ)。

「なんなんだい、この質問は(笑)?」(ビル)。

「自転車は好きだよ。たまに乗り回すね」(リー)。

「僕たちのセカンド・アルバムは自転車に乗りながら作ったんだ(笑)」(ビル)。

 今日もまた、コーラルは6人乗りの特製自転車に跨がり、〈ロック迷宮〉の街をすいすい走っていく。

▼コーラルの作品を紹介。

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