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特集

2003年ロンドン、果たしてこの街にロックは鳴り響いているのか?

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年07月10日 16:00

更新: 2003年07月10日 16:02

ソース: 『bounce』 244号(2003/6/25)

文/山口 珠美

 ビートルズ、ローリング・ストーンズ、キンクス、スモール・フェイセズ、デヴッド・ボウイ、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、セックス・ピストルズ、クラッシュ、スミス、オアシス、ブラー……ユニオン・ジャックのもとに時代を彩ったロック・アイコンたち。常に永続性を感じさせてくれる伝統は、英国人にとって心の拠り所。一度愛したものは、そう簡単に捨てたりしない。その一方で、変化への欲求──目新しい音に吸い寄せられ、シーンの先駆者として名前を刻んできたクール・ブリタニアの誇りもある。そんな二面性に支えられ、UKロック・シーンはここ40年の間に大いなる遺産を築き上げてきた。

現在進行形のロックはどこへ消えた?

 ところが、20世紀にフェイドアウトしてしまった〈ブリット・ポップ〉の儚い想い出にひたっているうち、シーンはケミカル・ブラザーズやベースメント・ジャックスなど、ダンス・アーティストたちのものになっていた。彼らの繁殖力の強さはロック・バンドたちのサウンドにも影響を与え、レディオヘッドなども実験的なエレクトロニック路線へ向かっていたり……。純粋なロックは影に隠れてしまった。しかもコールドプレイやトラヴィスのように孤軍奮闘でがんばっていた輩は、自信を得てUSへと向かうことに。UKロック・シーンは、中心がポッカリ抜けたドーナツ化現象を起こしはじめていた。

 一方、国内ではストリーツやミス・ダイナマイト、ミスティークなどのR&Bやガラージ・アーティストの活躍で、ブリッツ・アワードに新たなカテゴリーが設けられ、マーキュリー・アワードにミス・ダイナマイトが選ばれるなど、アーバン・ミュージック(R&B、ヒップホップ、UKガラージなど)は急成長を遂げる。とはいえチャート上位は、メディア量産型ポップ・アイドルとR・ケリー、ジャスティン・ティンバーレイク、50セントなどのUS産R&B/ヒップホップ勢がほぼ独占状態。多くの人種が集まるこの国ではさして驚くことでもないが、ティーンたちの関心が、ここにきて一気にアーバン・ミュージックへ向けられたことも大きく影響している。それとは対照的に、ピンク・フロイドやレッド・ツェッペリンがチャートに食い込むあたりは、往年のロック・ファン層の厚さを標している。

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