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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年05月15日 14:00

更新: 2003年05月20日 17:28

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/出嶌 孝次

怪物はいかにして怪物になったのか?

陰惨な過去を描いた自伝的映画


エミネムの初主演映画だ。全米ではすでに昨年11月に公開され、R-17にもかかわらず記録的な特大ヒットを記録した「8 Mile」がいよいよ日本でも公開される。それに先駆けて初の単独来日公演も行われるわけだし、時ならぬエミネム・フィーヴァーが、いままで以上の規模で訪れようとしている(もう訪れている?)わけだ。

さて、この映画が話題になったのは、何といってもエミネムの〈自伝的〉作品であるというポイントに尽きるだろう。主人公のジミー・スミスJr(エミネム)は、デトロイトの黒人居住区に母親(キム・ベイシンガー)と幼い妹といっしょにトレーラー・ハウスで暮らしているという設定。ジミーはBラビットというMCネームを持っていて、毎週クラブ〈シェルター〉で行われるMCバトルに参加しているが、プレッシャーと大多数が黒人で占められたオーディエンスの偏見に勝てず、まったく実力を発揮できないでいる日々が続いていた……。自動車工場でダラダラ働いて叱られるラビット、バトルでブーイングを食らうラビット、黒人にタコ殴りにされるラビット、母親が男と寝ている姿を見てしまうラビット、家賃が払えない生活を嘆くラビット、鬱屈した感情を持て余すラビット、目の前で女を寝取られるラビット……とこのうえなく陰惨なブルーに彩られたエミネム、じゃないラビットの姿がとにかく大フィーチャーされている。つまりは、彼のサクセスストーリーの序章にあたる部分なわけだ。スターたる現在のエミネムがラビットを演じているのにまるで違和感がないのも何か凄いが……。

こういう情けないエミネムの姿には、彼が“My Name Is”でメジャー・シーンに登場してきた時のことを思い出さずにいられない。実は、白人が黒人のなかでどう際立ってみせるのか……というクライマックスの部分に対する回答がそのまま“My Name Is”に繋がってきてしまうので詳しくは書かないが、エミネムがエミネムたりえた理由を示すことが映画のテーマなのかも。

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