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特集

MOODYMANN ―― デトロイト最強のメランコリック・マン

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年05月15日 14:00

更新: 2003年05月20日 17:28

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/門井 隆盛

マーヴィン・ゲイが父親に銃で撃たれたことを報じるラジオ放送のサンプリングで始まる“The Day Soul Is Lost”や、ノーマ・ジーン・ベルとの妖艶な共演曲“Long Hot Sexy Night”など、メランコリックで妖しい響きを持ち、聴く者のソウルを震わせる数多くのマスターピースをリリースしてきたムーディーマン。彼はそれらのリリースで一躍世界中のアンダーグラウンドのダンス・ミュージック・シーンから注目を集めることになった。

彼の音楽はまるで教会で聴くゴスペルのように、日々の屈辱や悲しみや怒りから僕らを解放してくれる。しかし、ムーディーマンたちはカトリックの教えに倣うことよりも、世の中にあるすべてのルールを破り、みずからのルールを築くことに興味があるようだ。

彼らはシステムに属することなく、みずからオルタナティヴな道を切り拓き、いわく「俺のようなニガ-が歩き回る」街、デトロイトでクリエイティヴな人生を送ろうとしているのだ。

このたびリリースされた、ムーディーマンの2年半ぶり通算4枚目となる新作『Silence In The Secret Garden』。収録曲はいずれも涙のしずくのような輝きを放っている傑作だ。1曲目は静かな曇った朝の空のような雰囲気のイントロ曲“Entrance To The Garden”。そこから、間髪入れずインナーゾーン・オーケストラの“People Make The World Go Around”のリメイク“People”が始まり、ノーマ・ジーン・ベルのサックスが官能的に響く。5曲目の“Shine”のピアノ・リフは底なしに切なく、美しい。この美しさこそが決してポジティヴなだけではない、ネガティヴなものを持つ者のみが放つことのできる輝きなのだ。

また、8曲目のアルバム・タイトル曲“Silence In The Secret Garden”は10分以上の大作。まるで頭の中で起きている葛藤を見せられたかのような音像から始まり、ハンマー・ビート、濡れた女性ヴォーカルが雨の音の中でしっとりと響く。音はスカスカだけど、随所にシンプルながらもアイデア溢れるカッコいいフレーズが詰まった素晴らしい曲だ。そして、ラストを飾る“Sweet Yesterday”は22世紀のソウル・クラシックとなりうる、感動的なトラック。〈美しさのなかには必ず切なさがある〉というが、その言葉にふさわしい楽曲ばかりが収録されている。

また、新たにムーディーマンは自身が主宰するレーベル、マホガニー・ミュージックを立ち上げ、これまでに“Fine By Myself”“Runaway”といった切なくて官能的なダンス・トラックを収録したシングル2枚をリリースしている。

アーティストとしての円熟期を迎え、活発な動きを見せるムーディマンの今後の動向に注目すべきだ。

▼ムーディーマンのアルバム


2000年作『Forevernevermore』(Peacefrog)

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