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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年05月08日 19:00

更新: 2003年07月10日 16:01

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/村尾 泰郎

ヒップホップ/ダブ/パンク……あらゆるエッセンスを化学反応させる異能の音楽集団、アウト・ハッド。注目の新作はこんなにもスリリング!!


 ニック・オファー(ベース)、フィリス・フォーブス(シンセ/ドラムス)、モーリー・シュニック(チェロ)、テイラー・ホープ(ギター)、ジャスティン・ヴァンダーヴォイゲン(ミックス)――こんな変則的な編成からなるブルックリンのグループ、アウト・ハッド。彼らのサウンドは、あらゆるジャンルを呑み込んで増殖するアメーバ。それも飛びきり攻撃的な。たとえば最近リリースされた彼らのファースト・フル・アルバム『Street Dad』を聴いてみたらいい。1曲目、チェロの緩やかな調べから始まって、突然襲いかかるシンセのブレイクとダブ・ミックスの強烈なアタック。まさに狙いすましたような一撃。ゆるゆるでギザギザ。そのユニークなサウンドの成り立ちについて、アウト・ハッドはメンバー各個人としてではなく、グループ全体の意見としてインタヴューに答えてくれた。

「今のサウンドには自然に辿り着いたんだ。最初にあったアイデアは、ダブをプレイしようということだけだったしね。もっともそれも、最初のジャムの時だけ。みんなが我を忘れてジャムに夢中になる前の5分間くらいの話だけど(笑)。あとは自然の流れに身を任せてきたって感じかな。そうすると思いもかけない場所に辿り着けるんだ。でも、音楽を作るってそういうことじゃないかな」。

 そして今では、ジャム・セッションの持つ偶発性を核に、テイラーが作ったビートをメンバーそれぞれが加工してアイデアを持ち寄ったり、最終的なミックスを担当するジャスティンが段階ごとにメンバーに意見を聞いて、それをフィードバックさせて曲を仕上げていくという。

「とにかくさまざまなやり方でレコーディングを試すことが大切なんだ。ひとつの型にハマッたやり方はしたくない。もちろん、曲作りには思いもよらないことが起きるチャンスは残しておくようにしてる。そして、それが起こったら、綿密な作業でそれを仕上げていくんだ。ほら、マルセル・デュシャンの〈大ガラス〉みたいに」。

 このバランス感覚の良さが、アウト・ハッドのサウンドを解くひとつの鍵だろう。そしてメンバーの5人すべてが、以前はパンク・バンドにいながらも、ダブやヒップホップに強く惹かれていたことも重要。

「ヒップホップは今まで聴いたなかで、いちばん奇妙で新鮮でファンキーな音楽だと思う。それに常に進化を続けてる。そしてダブが持っている空間性には、リスナーが好きなようにその音楽を解釈できる自由さがある。つまり、自分自身のムードを反映できるようなサウンド。アウト・ハッドのサウンドもそんなふうになりたいと思ってるんだ」。

 もちろんパンクにも影響を受けている彼らが(「〈ファック・ユー!〉の効果的な使い方を知ってるバンドは今でも好きだよ。パンクが教えてくれた理念はバンドにとって大切なことなんだ」)、ダブ/ヒップホップとの邂逅を果たすという流れは、かのトータスを彷彿とさせるところもある(「トータスをとおしていろんな音楽を知ったのは確かだ」)。加えてニューウェイヴからの影響も、その初期においてはあったらしいが、彼らはもっとたくさんのスリルを必要としているのだ。

「ニューウェイヴ~ノーウェイヴのバンドとアウト・ハッドがよく比較されるのは、アートっぽいけど新鮮で激しい音楽をやってるからだと思うし、それはいいことだと思ってる。そういう音楽がもっと増えるべきなんだ」。

 チキン・リップスやティンバランドを愛し、ブラック・ダイスやDFA周辺ともネットワークを持つアウト・ハッド。今後ますますシーンのなかで重要な位置を占めるに違いない彼らに、クリエィティヴの面で最大の武器は何かと尋ねると、きっぱりとこう答えてくれた。

「人生に対する愛とオリジナリティーさ」。

 新作を聴く限り、それは間違いないようだ。

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