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特集

さまざまな異種交配を繰り返しながら進化するシーン SCENE1 -CROSSOVER?-

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年04月17日 13:00

更新: 2003年07月10日 16:01

ソース: 『bounce』 241号(2003/3/25)

文/土佐 有明

クラブとライヴハウス、DJとバンド、打ち込みと生演奏、デジタルとアナログ。こうした領域間にかつて存在したはずの境界線が、ここ数年、急激な勢いでなくなりつつある。ロック・バンドがクラブや野外レイヴに出演することはなんら特別な光景ではないし、DJにとっても、バンドによる生演奏を解体/再構築することは日常茶飯事となった感がある。要するに、複数のフィールドを自由に横断/往来するアーティストが増えてきたということだが、そのなかでもロック/ポップス・サイドからクラブ・サイドへの接近は特に顕著だ。海外なら、エレクトロニカとの親密な関係を築いたビョークの『Vespertine』やレディオヘッド『Kid A』が成功例として挙げられるが、国内に目を向ければ、スーパーカーが益子樹(ASLN、ROVO)や砂原良徳をプロデューサーに迎えたり、UAがレイ・ハラカミとコラボレートしたり、同じくくるりがレイ・ハラカミにリミックスを依頼したり……といった流れが象徴的なところだろう。また最近では、ROVOがライヴで井上薫やレイ・ハラカミとセッションしたり、SBKがCalmにリミックスを依頼したことなども特記しておきたいところ。

一方、DJの側にも、デジタルでは再現不可能なバンド特有の〈生のグルーヴ〉を見直す動きもここ最近では顕著になっている。RevirthからリリースされたTaichiのソロ作品『weekend control』には、ROVOの芳垣安洋のドラムが素材として使われているし、本特集でも取材を行ったRASAのMitsuruは、その芳垣率いるVincent Atmicusの曲をDJの現場でよくかけていると話していた。ほかにも、大友良英's NEW JAZZ QUINTETがOEとの共演作を4月末にリリースする予定だったりと、ジャズ方面でも異種交配の動きは活発だ。

つまり、冒頭で述べた両者は、もはや二項対立を成すものではなく、いまやまったく同じ地平に立ちながら相互に刺激/触発し合う関係にある。今後も、そうした地平から刺激的な作品が生み出されることはまず間違いないだろう。

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介。

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