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特集

LINKIN PARK(2)

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年04月10日 13:00

更新: 2003年04月10日 18:19

ソース: 『bounce』 241号(2003/3/25)

文/有島 博志

サヴァイヴァル・レースの勝利者

『Hybrid Theory』は全米チャート16位に初登場するというパワーとエナジー漲るチャート快進撃を展開し、周囲をアッと言わせた。リリース直前にはメンバー間で同作が1週目で何枚売れるかの賭けをしていた。だけど各自が挙げた枚数を遥かに上回るセールスが出、上記したような激しいアクションとなり、急浮上の大きな原動力となった。以前ジョゼフ・ハーンとマイクはそれについて口を揃えて「インターネットを効果的に使ったプロモーションが効いた」と語ったけど、大成功の要因はそれだけじゃない。デビューからほぼ1か月後、アメリカ中西部ミズーリ州カンザスシティーで彼らのライヴを観た。そのとき彼らは前座の前座、そのまた前座扱いで4バンド出演のライヴで一番手でステージに出た。欧米のライヴの場合、通常はしょっぱなに出るバンドがプレイする頃は観客の数はまばらだけど、チャート効果もあったんだろう、場内はすでに満杯で、かつメチャクチャ受けていたのには面喰らった。出番を控えたプロジェクト86やヘッドはさぞかしやりにくいだろうと思えたほど。そしてもっと驚かされたのが、ファンの若さ、幼さだ。たぶん下は11、12歳ぐらい。いまサム41、ニュー・ファウンド・グローリー、グッド・シャーロットら若手パンク・ロック/ヘヴィー・ロック勢の台頭で、ファン層の低年齢化が物凄い勢いで進んでいるけど、その先鞭を付けたのが彼らだった。改めて『Hybrid Theory』と『Reanimation』のアートワークを見てほしい。ヘヴィー・ロック/ミクスチャー・ロック系の作品に多く見ることができ、ある種聴く層を限定する〈PARENTAL ADVISORY EXPLICIT LYRICS〉の表示(簡単にいえば、過激な歌詞を歌う作品であることを表わす)が、それらにない。これはそうした若く、幼いファン層の親に〈安全音楽〉を意味し、自分の子供たちに聴くことを容認する。それが彼らのファン層を低年齢化させ、大きく広げる役割を果たした。日本じゃさして問題にならないけど、音楽に〈検閲〉を導入するアメリカでは大きくものを言う。そして、そうやって得たファンを彼らは大事にしてきた。

「ライヴ終演後に必ずミート&グリートの場を設け、サインしたり、いっしょに写真を撮ってきたりした。だけど前回のツアーの後半では頑丈なバリケードを通してそれをやらなければならなくなってしまった。コミュニケーションの方法を変えようと、ファン・クラブ〈LP Underground〉を発足させたんだ」(チェスター・ベニントン、ヴォーカル)。

 そして〈リンキン大成功〉の最大の要因は、なんといってもあのわかりやすく、入りやすい〈リンキン節〉が多くの人の耳をしっかり捕らえ、心をガッツリと掴んだことにある。ハードコア、メタル、ヒップホップ、エレクトロニック・ミュージックをぜんぜん難解にではなく、むしろ心底わかりやすくミクスチャーし、フックの強い泣きのメロディーを始終響かせ、コンパクトにまとめた楽曲の数々を並べた彼らならではのアプローチは、普段ほとんどロックとは無縁というイメージが強い東南アジア諸国のひとつ、インドネシアでも大ヒットするなどの世界的大ヒット旋風を巻き起こした。そんな〈リンキン節〉が新作『Meteora』でさらに磨きが掛かり、より艶やかになり、冒険/挑戦にも打って出るなど、完全に次のレヴェルへと着地している。

「自分たちが新作に課した課題は、僕たちの持っているものをもっとその先まで延ばし、さらに今風に解釈するということだった。いままでに聴いてきた音楽、感じてきたものは同じなわけだから、それにさらに付け足された新しい経験や知識が備わったのが、この新作なんだ」(マイク)。

「そう、いままでになかった音をどうやって出すかっていうチャレンジでもあった。ファースト・シングル“Somewhere I Belong”のサンプリングは本当に凄いし、マイクのラッピング・ヴォーカルもいつもより多く重ねた。作業によってはとても大変だったけど、そのぶんやり甲斐もあったよ」(フェニックス、ベース)。

 新作でもサウンドのミクスチャー感、メロディーの響き具合、楽曲の覚えやすさなどは、相変らず絶品。その〈リンキン節〉に虜となる人がさらに増殖することに大きな期待を抱かせるものだ。ロング・ツアーを経験することで彼らは人間としても、またアーティストとしてもさらに大人になり、しっかり地に足を付けた。あのアティテュードをより強固なものとし、絶対的な存在感、説得力すら放つようになってきている。新作『Meteora』は、迷うことや躊躇することなどない、まさに必聴作である。

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