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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2003年02月06日 14:00

更新: 2003年03月20日 13:33

ソース: 『bounce』 239号(2002/12/25)

文/轟 ひろみ

余裕綽々のスヌープ・ドッグがまたゲームを動かすぞ!


 92年、ナズは何をしてた? ジェイ・Zはどこにいた? ビギーは? エミネムは? このスヌープ・ドッグはすでに世界をロックしていた。ドクター・ドレーの“Nuttin' But A "G" Thang”で脚光を浴びてからおよそ10年、ルーキーの頃からゲームの頂点に立っていたスヌープこそ真のメジャーリーガーだ。

 彼のニュー・アルバムは『Paid Tha Cost To Be Da Boss』と名付けられた。直訳すれば〈代償を払ってボスになった〉。そう、みずからのレーベルを正式に設立したいま、スヌープはついにボスになったのだ。

「これまでのキャリアを振り返って考えると……まず俺はサポートする側の立場からスタートした。初めてのプロのギグはドレーのサイドMCだったんだ。そこからフロント・ラッパーへ這い上がったが、このゲームではまだまだの存在だったな。デス・ロウで成長して、前進するためにマスターPのノー・リミットに移籍した。
いろんなことを学んだよ。俺自身が成長するたびに俺のステイタスも上がっていった。そして、これまでのキャリアを振り返ってみて、俺は自分がゲームの先頭に立ってるボスなんだと思うことができたんだ。なぜって、いまこのヒップホップ・ゲームに参加してる奴らは、みんなデス・ロウ、ドクター・ドレー、そしてスヌープ・ドッグの影響を受けてるはずさ。これは誰にも否定できない事実だぜ。俺は他の誰にも真似できないものを持ってるんだ」。

 スヌープしか持っていないもの、それはまずラップのスキルだろう。誰も聴いたことのなかったレイドバックしたフロウ、含み笑いをするようなキラーなライミング、独特のタイム感で繰り出すキャッチーなパンチライン……。彼が登場してきた時期にはリリシストこそが高く評価されていたものだが、スヌープの登場でフロウアー人気に火が点いたのだ。そんなフロウアーの隆盛がヒップホップをいっそうポピュラーなものにし、ジェイ・Zやネリーといった個性的なフロウの持ち主を登場しやすくした、とも言える。

「ああ、スラングやヘアスタイル、サウンド、イメージみたいなものも含めて俺は作り上げてきたな。大勢の奴らが俺のスタイルを採り入れたりしてるけど、楽しんでやればいいと思ってるよ。俺もそうしてきたわけだし。だから、俺がオリジネイターだ、とかそんなことは言わない。いまは俺が松明を持って先頭を進んでるってだけさ」。

 そうやって登場したのがソロ・アルバムとしては6枚目となる『Paid Tha Cost To Be Da Boss』だ。ムラの多いネプチューンズがここでは完璧なビートを仕立て、フレッドレックやジェリーロールといった西の生え抜きが参加する一方で、ハイ・テックやDJプレミアらも迎えた力作だ。彼自身はその聴きどころをこう語る。

「成長したスヌープを楽しんでくれ。やっと自分の望み通りのアルバムができたよ。誰と組んでても誰にプロデュースされてようと、スヌープは凄いんだぜ。絶対に楽しめるパーティー・アルバムだ」。

 そのパーティー・アルバムを締めくくるのが、〈シュグ・ナイトはビッチだ、賭けてもいいぜ〉と強烈に言ってのける“Pimp Slapped”。古巣のデス・ロウやそこに移籍してしまった盟友コラプトに叩きつけたディス・ソングだ。ただ、スヌープは「コラプトは馬鹿なことをしたけど、仲間であることに変わりはない」とも話している。

「俺のすることに特別な悪気があるわけじゃないんだ。俺はただ常に新しいものを提供する素晴らしいエンターテイナーでありたいだけなんだよ。それこそ俺がキャリアを通じて行ってきたことなんだ」。

 スタジアムに押し寄せた満場のオーディエンスの前で何を言うべきか、バッターボックスに入ってどう振る舞うべきか、言うまでもなく、ボスにはすべてわかっているのだ。

▼『Paid Tha Cost To Be Da Boss』に参加したアーティストの作品。

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