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特集

ORGANIC TOUCH 独自の空間を求める演奏形態

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2002年12月26日 10:00

更新: 2003年03月12日 20:32

ソース: 『bounce』 239号(2002/12/25)

文/林 剛

 打ち込みビートに対するアンチテーゼという反骨精神も徐々に和らぎ、むしろ生演奏主体のオーガニック・ソウルがシーンのひとつの柱となった2002年。だが、流行とは別の次元で、アーティストたちはこれまで以上にパーソナルでシンプルな空間を求め、己の技と美学を追求した。掲載の8組中6組が来日公演を実現させたように、生のパフォーマンスへのこだわりも強く、みずからの原点を見つめ直すという極めて内省的な音楽を展開しながら、それを自己完結させることなく、各々がリスナーと深く結びついていたことも忘れがたい。

PRINCE The Rainbow Children NPG オーガニック・ソウル的なスタンスをとるアーティストの多くが師と仰ぐプリンス。そんな彼がディアンジェロに始まるそのシーンを総括したとも言えるのが本作で、これを折り返し地点に世のオーガニック熱はさらに上昇した。全編に渦巻くジャジー・グルーヴが最高だ。

REMY SHAND
『The Way I Feel』
 Motown
カナダ出身の白人……という、R&B的には偏見を持たれそうな出自の青年がキダー・マッセンバーグのもとから登場し、真正面から70年代ソウルを狙ったことが、むしろ〈新しい〉と思われた意欲作。ここまで徹底してすべてをひとりでこなした人も珍しい。

LAURYN HILL
『MTV Unplugged No. 2.0』
 Columbia
実際にライヴが行われたのは2001年の夏。だが、娯楽性を排除したストイックな内容が賛否を呼んだのは2002年。表舞台から身を潜めていたローリンがアコースティック・ギターの弾き語りで自己を見つめ直すこと自体がオーガニックな行為だった。

RAPHAEL SAADIQ
『Instant Vintage』
 Universal
オーガニック・ソウルの源流を辿ればトニ・トニ・トニに行き着く……ということを改めて知らしめてくれたヴィンテージな一枚。打ち込みと生演奏の融合グルーヴが良いのはもちろん、ストリングスの響きの美しさを再認識させてくれた作品でもある。

MESHELL NDEGEOCELLO
『Cookie : The Anthropological Mix Tape』
 Maverick/Warner Bros.
〈オーガニック〉なんて言葉が踊り出す前からとっくにオーガニックだった彼女が、より深く原始的・根源的なものを探究することで己の立ち位置を再確認。ゲスト陣はいつになく多彩な顔ぶれだが、孤高のレディー・ファンカーぶりは健在だった。

INDIA. ARIE
『Voyage To India』
 Motown
デビュー作の余韻も冷めやらぬうちに発表したセカンド・アルバムは〈ありのままでいたい〉彼女を映し出した一作。その飾らない姿勢が後続の女性たちに勇気と自信を与えた。グッド・ミュージックを生み出すアトランタ・シーンの奥深さをも感じ取れる。

DONNIE
『The Colored Section』
 Giant Step
ネオ・ソウル流行りとは違う次元での70年代ニュー・ソウルの真摯な継承。サウンドやヴォーカルなど表向きの個性もアリだが、黒人のルーツを振り返り、聴衆と対話する姿にオーガニックの極意を感じる。IG・カルチャーと絡む先鋭性も評価したい。

JULIE DEXTER
『Dexterity』
 Ketch A Vibe
インディペンデントで活動するオーガニックな女性の在り方をもっとも理想的に、心地良く体現していたのが、このジュリー。US←→UK間を渡り歩き、さまざまな音楽性を美しくまとめてみせる手際の良さは見事だった。未来派ディープ・ソウルのお手本作だ。

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