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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2002年12月19日 12:00

更新: 2003年03月20日 13:34

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/JAM

幸運の女神に微笑まれた才女


正式なデビュー以前にさまざまな形態による露出がまかり通る昨今ゆえか、派手目な事前露出がほとんどなかったヴィヴィアン・グリーンの登場にはどこか唐突な印象を受けないでもなかった。だが、彼女ならばいきなりのアルバム・デビューさえ不自然ではなかろう。まだ未完成の部分があるとはいえ、活況を呈するフィリー・シーンの息遣いを生々しく伝えながら、彼女の人となりをもハッキリと描ききった『A Love Story』は、何故にデビューが急かされなければならなかったのかの理由を綺麗に解き明かしてくれている。兄弟愛の街がまたもや才女をわれわれに送り届けてくれたのだ。

〈唐突〉とはいっても、ただ目立たなかっただけの話で、彼女にはそれ相当のキャリアがある。ジル・スコットのツアー・メンバーに参加していたことはジルのライヴ・アルバムのクレジットからもすでに判明していることだが、それ以前の活動について、彼女自身インタヴューでこのように振り返っている。

「エリック・ロバーソンって知ってる? 彼はEMIパブリッシングと契約してるソングライターなんだけど、彼とは昔から仲が良かったの。私はラフ・ハウスと契約の話があったんだけど、それが暗礁に乗り上げて自分に自信がなくなって落ち込んでた時期があったのね。彼はそんな時にも〈自信を持って。曲を書き続けて、録り続けていかなきゃダメだよ、ヴィヴ〉って勇気付けてくれるような人で。彼の家にはスタジオがあって、私の家から40分くらいの所にあるんだけど、彼の家に行って時間を作ってレコーディングをすることにしたの。18歳の時、ボーイズIIメンのアルバム『Evolution』で彼といっしょに曲を書いて、バック・コーラスをしていたりもするのよ(この時、ボーイズIIメンのマイケル・マッキャリーと彼のパートナーであるダレル・ボトムズが彼女のマネージメントをしていたらしい)。それに、マリック・ペンドルトンともいっしょに仕事をしていたこともあるわ。現在はアトランティックと契約してる素晴らしいプロデューサーで、彼の依頼でメアリーJ・ブライジのために曲をいくつか書いたりもした。結局それらは採用されなかったんだけど」。

それ以外にも、そうした活動の傍らで、「映画〈ウェディング・シンガー〉のアダム・サンダーみたいだった」と引き合いに出しているとおりに結婚式場などで歌って生計を立てていた時期もあるそうで、端から見ると苦労の陰がチラホラするものの、当の本人はあっけらかんというか、サッパリとしていて気持ちがいい。天真爛漫とでもいうのか、結構そういう人のところには幸運が舞い降りてくるもので、前述したジル・スコットのツアー・メンバーへの抜擢もまさに幸運を絵に描いたような話だ。ヴィヴィアンはこう述懐している。

「タッチ・オブ・ジャズにいた友達が私に〈ちょっと歌ってほしい〉って急に連絡してきたの。ちょうどその時はジル・スコットがプロモーション用のショウをやっていたんだけど、それまでコーラスをやっていた子が辞めたか何かで、とにかく新しいバック・ヴォーカルを探してるって。それで、もちろん!って引き受けたのよ」。

そしてディールを獲得するまでの経緯も彼女が強引に運を引き寄せた印象が大だ。

「その後、アクシス・ミュージックのシャンティ・サイルズが私のマネージメントを引き受けてくれるようになったんだけど、出来上がったばかりのデモの売り込みを早速始めてくれて、私がジルと海外にいる時に〈早く戻って来て! みんな会いたがってるから!〉って電話が入ったの。私は咄嗟に途中で抜けて帰って来ちゃって。〈今回は上手くいきそう〉っていう気がしたのね。シャンティの言葉どおり、いろいろなレーベルの人たちに会ったんだけど、コロムビアのやる気にとても惹かれて。その年の終わりにはもうレコーディングに取り掛かってたわ」。

アルバム『A Love Story』はこうして完成を見たわけだが、絡んだ連中はフィリーの名うてばかり。クレジットもドキドキするような人たちの続出だ。しかも、彼女がその面々と等身大でやりとりしているのが、アルバムのリラックスした雰囲気からも伝わってくる。特に制作面でメインを張っているジュニアス・バーヴィンとは以下の発言どおりベッタリの仲のようだ。

「彼は物凄い才能の持ち主よ。まだまだ知られてない人だけど、私のアルバムがこんなに才能のある人を広く紹介できるきっかけになればいいなと思ってる。彼と私は15歳の頃からの知り合いだし、正真正銘の仲間なのよ」。

その口から「仲間といっしょに成功したいの」という言葉が飛び出すほど、彼女は熱いミュージシャンシップを持った人だ。その心意気もまたひとつのフィリーらしさのように思う。

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