こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2002年12月19日 12:00

更新: 2003年03月20日 13:34

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/出嶌 孝次

俺にもできるんじゃないか

ただ、ヴィクターにわかりやすい個性を与えているのは、DJ、プロデューサーと並ぶもうひとつの顔……シンガーとしての側面だ。しかもその発端は8歳の頃だという。

「そうなんだ。11歳まで合唱団に入って歌ってた。その当時はフィリー・ソウルみたいなものはとくに意識してなかったけど、合唱団でテディ・ペンダーグラスのショウに出たときに、これしかない!と思ったよ」。

奇遇にもヴィクターはテディの93年作『A Little More Magic』でプロデュースを手掛けることになるのだが……実はそんな最中にもシンガーへの思いが消えることはなかったそうだ。その情熱と滑らかなヴォーカルの実力をもってすれば、もっと早くアルバムに至っていた気もするのだが。

「そうだよな。でも、そもそも俺にはアーティストになるっていう認識がなかったんだ。仕事の内容もずっとプロデューサー的だったし。でも、スタジオでアーティストが歌ってるのを見てたら、俺にもできるんじゃないかと思えてきたんだよ」。

そして、MAWや!K7からのシングル・リリースに続いて、ようやく登場したのが今回のアルバム『International Affairs』だ。盟友ポイザーはもちろん、4ヒーローのマーク・マックも参加し、R&Bとハウスと西ロンの音をクロスオーヴァー文脈に浮かべたようなこのユニークで〈ネクスト〉な作品は、どのようなプロセスを経て生まれてきたのだろう?

「各々の楽曲が異なるストーリーを持っているから、その味をひとつひとつ引き出してレコードにしようとした。どうしたかっていうと、〈この曲はマイアミ、これはロンドン、そしてNY、LA……で、最後にフィラデルフィア〉ってな感じで、曲に合わせてレコーディングする場所を選びながらやったんだ。毎回異なるミュージシャンを迎えてね。楽しかったよ。1年費やす予定だったけど、7か月ほどですべてを終えたんだ。今回のアルバム全体のコンセプトはタイトルどおりに〈異文化コミュニケーション〉を意識したもので、このアルバムにあるエッセンスがどんな国のどんな人種に対しても通じるよう願っているよ。楽曲のインスピレーションはそれこそありとあらゆる場所から得ている。普段の散歩とか(笑)、海外──例えばロンドンや東京、パリ──でいろんな人たちと出会うこととかね。俺はどこでもエンジョイできるタチだから(笑)。去年、DJの仕事で日本にも行ったけど凄く楽しかったな」。

DJ/プロデューサーという顔も両立させつつ、「いまは自分がシンガーであることに満足している」と話すヴィクター。今後の展開は?

「そうだね、音楽っていうのは何度も繰り返し探求し続けることで何かを学び得るっていうところがあると思う。答えになってないかな。このアルバムを作れたのは嬉しいけど、まだ自分にとっては始まったばかり。自分がこの世を去るその日まで、何かを達成できた、なんて考えられないね」。

まだまだ彼は生み出し続けてくれるだろう。新しいフィリーを、新しい音楽を。

記事ナビ

インタビュー