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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2002年12月19日 12:00

更新: 2003年03月20日 13:34

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

綿密に、細心の注意を払って

では、そもそも生演奏でヒップホップをやろう!というアイデアはどこから生まれたものなのだろう? やはりこれも楽器演奏に重きを置くフィリーの伝統なのか。

「うーん、家族の伝統と言ったほうがいいかも知れないな。そう、グランドマスター・フラッシュにこんな話がある。彼は本当はドラムを叩きたかったんだけど、母親にアパートでは音がうるさいからって止められて、それでエレクトリック・エンジニアになって、最後にはターンテーブリストになった。俺はその逆でDJになりたかったんだ。親父がシンガーだったからレコードをたくさん持ってて、よく聴いてたから、ヒップホップのどの曲がどの曲をサンプルしてるかもすぐにわかったしな。でも、オヤジが持ってたレコーディング用の機材には触らせてもらえなくて……代わりに楽器を買ってくれて、それで俺はドラマーになったんだ。ハイスクールに通ってた頃はもうヒップホップの時代だったから、当時流行ってたランDMCやオーディオ・トゥー、ステディBなんかのリズムが複雑なものでも叩くことができたよ」(クエストラヴ、ドラムス)。

年間の3分の2以上の日数をライヴ活動に費やしているというルーツは、ステージのパフォーマンスにヒントを得て、それをスタジオに持ち込むことも少なくないという。

「俺たちの場合、生き残る術は確かにレコードの売り上げ枚数よりもライヴ活動なんだと思う。でもな、ライヴが重要だからといってアルバムが補足物であるようには考えてほしくないんだよ。俺たちは綿密に、細心の注意を払ってアルバムを作っているからさ」(クエストラヴ)。

そこで今回、出来上がったのが新作『Phrenology』。タイトルを訳せば〈骨相学〉となるわけだが、それにしても今回のジャケット――人間の脳の部分にいろいろ描かれたイラストは何を意味しているのだろう?

「ジャケットにある脳の絵は、あの脳の部分がルーツだってことだ。もっと言うなら俺たちの行動のもとになっているもの(The roots of behavior)だ」(ブラック・ソート)。

「骨相学についての記事を読んでそれをアルバムのタイトルにしようと思った時、ちょうど(新作で起用した)コーディ・チェスナットと出会ったり、ネリー・ファータドとレコーディングを始めたんだけど、今回はアルバムを物語風に仕上げたくてね。ひとつひとつの曲のなかでそれぞれの物語が語られているんだ」(クエストラヴ)。

ゲスト陣には、今回もこれまたルーツの音楽性に共振するようなコンシャスなタイプのアーティストが選ばれているが、アーティストの選択に際しては必ず親密な交友関係にあることが大前提だという。そういう意味では、ジル・スコットやミュージックらフィリー勢の参加は、ごく自然な成り行きだと言えるだろう。

「地元仲間とのコラボレーションは、みんなすぐ手が届くところにいるから連絡もしやすい。ミュージックが参加した“Break You Off”のゲスト候補は15人くらいいたんだけど、試しているうちにレーベルがストップをかけてきたりして……女声で試してみようと思ってブランディの起用も考えたけど(笑)。ミュージックはいっしょに曲も書いていたし、それで彼になったんだ」(クエストラヴ)。
『Phrenology』に参加したアーティストの作品を紹介

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